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続・あなたの未払い賃金が消滅する

おかぼん

 2年前に「『未払い賃金』が消滅する?」という題で、民法改正案可決により、商事債権の消滅時効が5年に統一されたことによる影響について述べたが、いよいよ来年4月より施行されることとなる。この日進月歩の世の中で、3年近くかけてようやく施行というのにも唖然とするが、厚生労働省が設置した有識者検討会で、未だに賃金債権をどうするかについて決着していないという実態にはあきれてものが言えない。

 このまま放置すれば、本来労働者を保護するべき民法の特別法である労働基準法が、こと賃金債権においては改正後の民法に劣るというねじれ現象が発生するのである。

 経営側の反論は次の通りである。「システム改修やサーバーの拡大に概算で1社当たり数千万円程度の費用が発生する」「経営基盤の弱い小規模事業者にとっては過大な負担となる」などなど。

 少々乱暴な言い方だが、改正案成立後施行まで3年近い猶予があり、いずれは労働基準法も民法に合わせることになるだろうことが十分に想定できる中にあって、そのための対応ができないという企業は果たして今後生き残っていけるのだろうか。

 しかも本来きちんと賃金を払っていれば全く問題は生じないわけで、それが過大な負担となるという経営基盤の弱い小規模事業者は、今後もサービス残業を労働者に強いていくつもりなのだろうか。

 さすがに最終報告書では「将来にわたり(現行の労基法上が定める)2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要」と明記されたとのことだが、具体的な延長期間や法改正の時期は盛り込まれなかったようだ。

 まもなく参議院議員の選挙戦が始まる。各党はこの問題をどう考えるのかについてはっきり有権者に示してもらいたい。未払い賃金は働き方改革以前の問題である。