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政府は企業に積もった200兆円を吐き出させよ

おかぼん

 今年の春闘も山場を超えたが、年々盛り上がりに欠けると思うのは私だけだろうか。結果は、連合の第2回回答集計によると、全体では6,475円・2.13%(昨年同時期比▲33円・▲0.04ポイント)だそうだ。

 3月中旬から下旬にかけて、日本経済新聞では「ニッポンの賃金」という特集記事を数回に分けて出したが、内容は1月18日の1面に「株主還元5年で2倍に」「『人への投資』課題」と題して書かれたものと殆ど変わらない。

 3月の記事では、「時給、20年間で9%下落」「IT人材報酬、海外と差」「ヒトへの投資、原資は200兆円」の見出しが躍る。

 時給の低下は主要国では日本だけで、国際競争力の維持を理由に賃金を抑制してきた結果、生産性の低い仕事の効率化を遅らせ、高付加価値の仕事への転換が進まず、それが賃金の上昇を阻むという「貧者のサイクル」に入っているという。一つの例として、アメリカでは、IT人材に30代で日本の2倍の賃金を出す結果、賃金ピークを過ぎた50代でも、なお年功序列の日本の25%増しであるという。日本では、抑制の結果として、企業に200兆円の現金が積み上がっている。

 ところで、3月初めにある経済セミナーで耳を疑う話を聞いた。2014年から可処分所得が増え続けているというのである。どうも実感がわかないと思ったら、その答えはこうだ。雇用者が増えた結果、全体の可処分所得が増加したのであって、1人当たりの可処分所得が増えたのではないという。

 その結果、総額として可処分所得が増えているにも拘わらず消費が伸びず、それは特に単身世帯と共働きの現役世代で顕著で、その原因は不明だが、将来に対する不安が消費を抑制している可能性が高いという。おそらく、企業に現金が積み上がるのも同様で、将来に備えて投資を抑制している可能性が高いと思われる。

 政府にはこの将来不安を払拭する政策とともに、積もり積もった200兆円を吐き出させる施策を求めたい。