月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

30年も変わらない光景

おかぼん

 サクラが咲き、4月になり、新入社員が入ってきた。オフィス街はそこかしこにそれらしい若者が群れをなしている。
 毎朝の通勤電車も2月、3月は利用者も少なく落ち着いていて、まれに座れることもあったが、新入社員に加えて新学期が始まると混雑はさらに激しくなり、電車も遅延することが多くなる。もう30年近く通勤電車を利用しているが、この光景はほとんど変わらない。
 5月の連休を過ぎると心なしか車内が落ち着いてくる。1ヶ月経って通勤に慣れてくるということもあるだろう。新入社員の集合研修が一段落するということもあるだろう。最近の学生は授業にまじめに出席するとは聞くが、サボり始める学生も出てくるのであろう。さまざまな要因が考えられるが、確実に落ち着きを取り戻す。
 とここまで書いたところで、朝のニュースを見たら、慣れない新人が電車のドア付近で立ち止まった場合、乗降時間にどれくらい影響があるかの実証実験をやっていた。立ち止まらずに車内の奥に入ったときの乗車時間16秒が21秒になって、その差5秒の遅れ。これが積もり積もって大きな遅延になるという。高速道路のトンネルや上り坂での、ちょっとした減速が大渋滞の原因になるのと同じことであろう。
 私は都会育ちなので、こんなラッシュは社会人になるまえに十分承知していたが、それでも当初は結構驚いたものである。さぞかし地方から出てきた人たちは大変だろうと思う。それで中には遅刻する新入社員も出てくるわけである。
 それに対してネットではさまざまな意見が飛び交っている。
 「新入社員は30分前に出てくるのが常識だ」とか、「早出手当を出さないならその必要はない」とか、「始業前に多少の雑談が出来るだけでも仕事のしやすさがかわってくる」とか。
 しかし、こういう身近な問題に対して労働組合の見解を聞いたことはない。社内事情に疎い新入社員に、「早く出てくる時間によって評価が変わることはありません」くらいは言ってくれてもよさそうなものだが。
 ふと数年前を思い出した。遅れて来た電車に乗ろうとしたところ駅員に、「無理な乗車はおやめ下さい」と言われたので、「遅刻するので乗れないと困ります」と言い返すと、「では押しますよ」と言って押し込んでくれた。こんな客がいるから電車はさらに遅れるのである。