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「平成の記憶」はITの浸透

おかぼん

 元号を社会情勢で修飾するとすれば、文明開化の明治、デモクラシーの大正、敗戦と復興の昭和、であろうか。2019年5月、今上天皇の譲位により平成が終わる。

 私のような平凡なサラリーマンが平成を振り返ったとき、特に情報システムに長く携わった者として、平成30年の間にこれほどITが世の中に浸透するとは予想しなかった。

 昭和が平成になった当時、プライベートのパソコンは一部のマニアにしか普及しておらず、インターネットなどまだまだ先の話。私はWindows3.1のときにパソコンを購入したが、ソフトのインストールは何枚ものフロッピィディスクを差し替えながら進めるもので、マニュアルも厚さ数㎝もする、事典のようなものが付いてきた。

 携帯電話も比較的早く購入した方だが、申し込んでも端末を受け取るまでに何日も待たされたあげく、番号を電話帳に載せますか、と聞かれたものである。平成7年の情報機器の展示会では、携帯を使って無料で外線電話できるコーナーが人気を集めていた。マナーも確立しておらず、電車やバスでは携帯を持った乗客が遠慮なく、プライベートな通話を露出している時代であった。

 平成元年当時、関東の鉄道は一部を除いて自動改札機がなかった。JR東日本が自動改札機を本格導入したのは翌2年のことである。さらにその翌年、(磁気式)イオカードが登場。切符を買わなくても自動改札機を通れるようになった。ICカード「スイカ」が登場したのは平成13年。この普及に伴い、磁気式乗車券の利用者は徐々に減り、自動券売機は少しずつ撤去され、自動改札機もICカード専用に置き換えられていった。他の私鉄もほぼ同様である。

 そのため、利用者は駅の運賃表をじっくり見ることがなくなった。ICカードが導入される前は結構運賃に敏感だった利用者も、今はそれよりも利便性を求めるようになった。鉄道会社にとっては願ったり叶ったりで、不正乗車の取り締まりと過剰な運賃割引競争から解放されることになったのである。

 もっとも機械に頼りすぎるのは禁物である。運賃を引き過ぎていた、というニュースもときどきあるし、最近の私の経験では、長距離切符で途中下車しようとして自動改札機に誤って回収されるということもあった。これは駅員に頼んで探してもらい事なきを得た。

 平成を失われた30年と見る向きもあるが、ことITに限って言えば確実に進歩して、何よりも身近になった。私は、次の時代はAIが進化しロボットが社会に普通に存在するようになる、と信じている。その一端を東京オリンピックの次に来る2025年の大阪万博で見られることを楽しみに、夢を持って新しい年を迎えたい。