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労働分配率の低下に思う

おかぼん

 9月4日の日本経済新聞朝刊に「労働分配率43.5%に低下」という記事が出ていた。書き出しはこうだ。『企業の利益のうち労働者の取り分を示す労働分配率が下げ止まらない。』高度経済成長期の1971年以来46年ぶりの低水準とのことだ。

 つまり企業は儲かっているにもかかわらず、労働者への配分を渋っているということがはっきりと示されたわけである。人件費が増えていないわけではない。賃上げも僅かとはいえ実施されている。利益の増加に追いついていないのである。因みに16年度の内部留保は400兆円と過去最高を更新したようだ。

 3日後の9月7日の日本経済新聞朝刊には「ボーナス減消費に影」という記事。副題に「7月名目賃金14ヵ月ぶり減」「企業最高益の恩恵なく」。純利益が最高を更新しても、ボーナスの妥結額は減っている、という。記事の中で『好景気になればボーナスが増えるというのは、もはや思い込みなのかもしれない』とエコノミストは分析する。因みに、東証一部の配当総額は過去最高である。

 いわゆる春闘になると、経営側はことあるごとに「賃上げは生産性向上の範囲内で」と主張し、「利益はボーナスで還元する」としてきた結果がこれである。労働者が頑張って利益が増えても、その見返りがエコノミストにこのように揶揄されようであれば、どうすればいいのか。

 確かに昔のような「明日食う米がない」という時代ではない。しかし、「格差社会」という言葉が聞かれて久しい。確実に勝ち組と負け組に二極化が進んでいることはもはや疑いない。そろそろこの流れに終止符を打たないと大変なことになる。

 労働分配率が低くなる原因の一つに、外部委託の拡大など「職場の分断」が背景にあるという分析がなされている。派遣社員を減らし、正社員を増やし、組合の組織率を上げていくという地道な活動が改善につながることは疑いない。頑張れ、組合!