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ローカル線が消える、日本が消える

おかぼん

 去る7月28日、JR東日本は利用者の少ないローカル線の区間別収支を初めて公表した。

2019年度の収支なのでコロナの影響は少ないと言える。全国のJRも同様に公表したようだが、何れも似たり寄ったりでローカル線の収支は酷い状況だ。

 例えば、千葉県にある久留里線の末端区間では、輸送密度は僅か85人/日で営業係数は15,546円、つまり100円の収入を上げるのに15,546円かかるという。これでは、多少のてこ入れでは改善は困難であろう。

 ご承知の通り、国鉄からJRになる際に、収支の悪いローカル線は赤字83線がバスに転換されるなどして廃止された。今回公表された路線は何れも35年前に生き残った路線である。それだけに衝撃は大きい。

 因みに、久留里線の末端区間は35年前、それでも輸送密度は823人/日であった。減少率は何と90%。誰の眼にも最早存続が難しいことがよく分かる。瀕死の状態になるまで数値を公表しなかったJRにも責任はあるが、自治体の責任も大であると言わざるを得ない。

 この35年間はその大半が失われた30年に一致する。それだけに、バブルの崩壊による景気停滞がこの収支の悪化の一因と言えなくもないが、背景にもっと大きな問題が潜んでいると言える。それが人口問題だ。この解決なくしてローカル線問題は解決しない。

 久留里線は千葉県だが、今回発表されたローカル線の殆どは東北6県である。この東北6県の人口問題は極めて深刻で、人口が減るのみならず高齢化率が高まり、2045年には6県すべてで65歳以上の高齢者人口比率が4割を超え、秋田県に至っては何と50.1%となる。

 この状態を放置し続ければ、ことはローカル線存続どころではない。まずは、過疎の市町村が存続できなくなり消えていくであろうし、その延長線上では日本という国家も消えていく運命にある。

 人口問題は一朝一夕に解決できる問題ではない。手を打ってもその成果が出てくるのは何年も何十年も先の話である。だからといって、放置していたらどうなるか。出生数81万人、大学、短大入学者数68万人という数字が現在の異常さを物語っている。

 今の日本の問題はほぼすべて、根幹に人口問題があると言っても過言ではない。参院選が終わりしばらく国政選挙はない。このようなときこそ、政府はもとより与野党一体となって、この人口問題に大局的見地から取り組んでもらいたいと思う。