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輸送機関は快適を積み残すな

おかぼん

 第6波の襲来か、年末になってじわりじわりと新型コロナウイルス感染者数が増加している。そのようななか、主要鉄道会社は3月からのダイヤ改正を発表した。過去の春のダイヤ改正といえば、増両増便や終電の繰り下げなど輸送力増強が主な内容だった。それが、コロナ禍にあっては一転して、減両減便のラッシュである。なるほど、コロナ禍で利用者は統計上大幅に減少しているのは事実であるが、はたしてこれでよいのであろうか。

 電車に乗っていると、間断なくいろいろなアナウンスが流れてくる。その中に、コロナ禍にあっては「混雑を避けるため、テレワークや時差通勤にご協力ください」というのがある。そして、その要請に従ってテレワークや時差通勤を行った結果、利用者が減ったので減便するというのはやはりおかしい。

 これがコロナ終息後というのなら、全く分からないでもない。利用客に対して、マスク着用や窓開けの協力要請もないのであれば、鉄道会社も利益を出すためには現時点ではやむを得ない措置と言えよう。しかし、いまだコロナ禍にあって、利用者が減ったことを理由に減両減便というのは利用者無視も甚だしい。まさか、継続して「混雑を避けるため、テレワークや時差通勤にご協力ください」というアナウンスは流れないとは思うが、そのようなことでいいのであろうか。

 また、統計上の数値を活用して減両減便計画を立てたと思われるが、明らかに緊急事態宣言解除後の利用者は増えていることを実感する。私の利用している常磐線快速電車は20%減便する予定だ。20%減便すれば1便当たりの利用者は25%増加する。便と車両によってはすし詰め状態になること間違いなしである。

 5月のゴールデンウィークの平日、利用者がそれほど見込めないとして朝のラッシュ時の運転本数を通常の80%程度にした。ところが、5月6日に一部の路線で利用者が思ったほど減らず、列車によっては混雑率が180%を超えたため、7日は中止して通常ダイヤに戻したとことは記憶に新しい。その再現にならないことを祈るのみである。

 いずれにせよ、第6波がほどほどに落ち着けばそう心配したことではないが、利用者を荷物のように詰め込まなければ採算が取れないという状況は正常な姿ではない。コロナ禍の今をよい機会として、ダイヤが乱れるほど混雑する路線のみ増両増便し、利用者が減れば減両減便してそれなりの混雑を維持するという経営姿勢は改めて欲しい。