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働き方改革の主役はコロナ!

おかぼん

 9月末をもって長かった緊急事態宣言がようやく解除された。まん延防止等重点措置も合わせて解除されることとなり、少しずつではあるが日常が取り戻せそうだ。しかし、戦時中であれば空襲警報と警戒警報が解除されたに過ぎず、いまだ戦争は継続中で油断すればいつまた敵(コロナウイルス)が襲ってくるかもしれない、といった状況であろうか。

 しかし、これだけ長く非常時が継続していると、日常が取り戻せたとしてもそれはもうコロナ前と同じではない。焦土と化した国土が復興しても、もとの街並みに戻ることはなかったのと同じ理屈である。

 さて、定年退職した私は、受託業務のために月の半分ほどJR常磐快速線を利用しているが、朝夕のラッシュはこんな楽だったっけと思うほどの混雑度である。一番混む区間とされる松戸・北千住間は何と59ポイント減少し、今や91%の混雑率である。これは同線に限らず、現役時代、朝のラッシュ時に混雑による遅延が常態化していたJR総武緩行線も、錦糸町・両国間で83ポイント減少し、混雑率は111%になっている。

 結果として、東京圏主要区間の混雑度は56ポイント減の107%となった。大阪圏、名古屋圏もそれぞれ103%、104%に減少したが東京圏の減少が著しい。これは東京圏に本社部門が集中しているため、よりテレワークが進展したことを物語っている。

 問題はこれら本社業務の一部をテレワークにしたことによって、業績が大きく悪化しなかったことが証明されたことである。そのため、コロナが終息したからといってもう決して元に戻ることはない。働き方改革は皮肉にもコロナウイルスの蔓延により実現されてしまった。

 鉄道各社もそれを承知しており、今後は現在の混雑度でいかに利益を上げていくかに知恵を絞っている。幸いなことに、今年度の第1四半期は昨年同期で大幅に収益が改善し、大手のうち6グループ7社は営業黒字に転換している。これが、修繕費の削減など安全対策の先送りで実現されているとしたら問題であるが、広告宣伝費の削減や新車導入の先送りなどで実現されているとしたら、容認されるべきだろう。

 今日から飲食店の酒類提供も解禁されるようであるが、全員が出社するというこれまでの働き方の変化につれて、歓送迎会の在り方も変わってくるだろうし、年末年始の忘年会や新年会の在り方もまたしかりである。

 すべてが変わるわけではないにしろ、決してコロナ前に戻ることはない。飲食店もまだまだ前途多難である。