月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

分配無ければ繁栄も無し

おかぼん

 新たな年が明け、まもなく令和最初の春闘に向けた動きが本格化してくる。連合は定期昇給分を含めて4%程度の底上げを目標としているが、果たしてどうなることだろうか。

 バブル崩壊以降、一般労働者の1人当たり現金給与総額はほぼ横ばいである。さすがにパートタイム労働者に限って言えば、昨今の同一労働同一賃金の動きから特に最近上昇が著しいが、雇用者数に占めるパートタイム労働者等の非正規雇用者の比率が増加を続けているため、結果として総額では労働分配率の低下となって現れている。

 私も定年まであと1年を切ったが、定年後の再雇用の賃金水準は同一労働同一賃金の原則からは大きくかけ離れたものとなっており、それも労働分配率の低下の一因となっているのであろう。

 現金給与総額が増えない中で社会保険の負担は増加し、消費税も2度にわたって増税されているのであるから、景気が実感としてよくなると思えないのも無理はない。

 今月中旬、日本経済新聞は「安いニッポン」と題した記事を3日間にわたり特集した。1日目の記事の見出しには「伸びぬ賃金負の循環」とある。企業の賃上げが鈍り、働く人の消費意欲が高まらない結果、物価低迷が続き景気も盛り上がらない「負の循環」が日本の購買力を落ち込ませているという。経済協力開発機構によれば、1997年の実質賃金を100として、2018年の日本は90.1である。

 結果として、日本の100円ショップで売られている商品が、例えばタイでは214円、中国でも153円するという。賃金が上がらない結果、購買力が低迷し商品の値段を上げられない。そのため、企業収益の伸びが見通せず、賃金が上げられないという負の循環に陥っているのである。

 しかし、企業は決して賃金を上げられない状況にあるのではない。内部留保の総額は463兆円と7年連続で最高を更新し、2019年3月期決算企業(東証1部)の配当金総額も11.6兆円と、これまた6年連続の増加で過去最高という。

 物言う株主、物言わぬ労働者になってはいまいか。よくよく自戒して春闘に臨みたいと思う。