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どうしてフッ素が重要なのか

司 高志

 K国が、ホワイト国から外されることになった。安全保障輸出貿易管理は、武器になるもの、武器の製造に必要なもの、武器の素材、武器製造に転用できる技術的な知識などを対象にして、輸出に制限をかけようとする制度である。ホワイト国は、安全保障輸出貿易管理制度の中に設けられた輸出の手続きが煩雑でない国の分類を示す言葉である。

 まず断っておかねばならないのは、本件は輸出規制ではなく、我が国における輸出の管理の枠内で、K国に関する輸出物の管理の仕方が変更になっただけである。手続きが煩雑になるだけで、輸出規制そのものではない。ただ、結果として、申請したものが輸出できなくなることはありうる。

 表面上の手続きのみを見れば、輸出の規制ではないのだが、意味合いとしては、筆者は、本格規制への入り口的な警告の意味を持つだろうと認識している。

 K国をホワイト国から除外する理由として、我が国は不適切な事案を把握しているようなのであるが、それはまだ公表されていない。今後の扱いは不明であるが、徐々に明らかになるであろう。

 話は変わり、解せない点の一つは、火器管制レーダーの自衛隊機への照射があげられる。普通に船舶の海難救助をしているのであれば、我が国の海上保安庁へ協力要請があってもよさそうだが、なぜ火器管制レーダーの照射という行為を行ったのだろうか? 見られてはまずいことをしていたので、牽制のために照射したのではないかという疑問が残る。

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 さて本題はいつもの通り、マスコミがあまり書かない点について補足すべく、「フッ素の重要性」について書いておこう。

 原子爆弾には二つのタイプがある。ウラン型とプルトニウム型である。

 ウラン型の原子爆弾を作るときは、核分裂性のウランの濃縮度を相当に上げる必要がある。これがものすごく難しい。これができる国は今でも数が少ない。ウランを気体にして遠心分離機の中で回転させ、わずかな質量の違いを利用して、核分裂性ウランの純度を上げていく。ウランはもともと金属だが、フッ素をウランと化合させ、六フッ化ウランという気体にしてから遠心分離する。

 プルトニウム型の原爆を作るときもウランの遠心分離は必要なのだが、ウラン型の原子爆弾を作るような高純度の分離を必要としない。低濃縮であってもウラン燃料さえ作れれば大丈夫だ。作られた燃料を原子炉の中で核反応させることにより、勝手にプルトニウムが生成する。原子炉の中で反応した燃料を取り出して、硝酸で溶解させたのち、化学的にプルトニウムを分離していけばよい。化学反応プロセスを利用した抽出方法は、高度の技術を要さない。ちなみに余談だが、プルトニウム型の原子爆弾のキーテクノロジーは起爆装置である。某国の地下核実験の地震波があまり大きくないことを考えると、まだ完全にこの技術を使いこなせてないのだろう。

 フッ素に関してはこのほかにも、非常に毒性が強いという特徴がある。フッ素は皮膚についたときは、その場では何も感じられないが、浸透力が非常に強く、皮膚から体内に浸透していき、内臓や骨に達する。こうして知らないうちに体内からやられてしまい、死を迎える。

 以上のようにフッ素は、原爆の製造過程における材料と毒性の強い材料としての二面性を持つので、K国に対する扱いが先行的に厳しくなったと推定される。

 K国は、我が国から輸入したフッ素の行方の公開をずっと拒んでいるが、少なくともどこにどうしたのかは、ホワイト国復帰とは別にして、明らかにせねばならいない。