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腐りきった政権の公文書管理、その対策は?

司 高志

 「老後は年金だけではやっていけない。何とか対策しなければ」と思っている人は多いと思う。特にこれから年金をもらう人は、先行きは半端なく不透明である。こんな状況の中、おそらく金融庁は、問題の報告書を以下のようにたくらんだのだろう。

 ーーこれからは年金が頼りにならないから、自助努力で2000万円ほど余分に用意してね。ついては、株なんかじゃんじゃん買ってもらうと値上がりしていいのになぁ。ついでに金融商品も買ってもらうと業界は繁盛するしーー。

 しかし実際は、ーーなに、年金だけでは2000万円も足りないのか! 100年安心はウソだったのかーーと年金の方に、世間の耳目を集めてしまった。

 そこであわててアーソゥ大臣が「あの報告書は、受け取らないことにする」とか、「報告書自体は、もうない」などと、ふざけたことを言っている。

 金融庁の金融審議会はアーソゥ大臣の諮問機関であるから、そこから上がってきた報告は、途中段階であっても立派な公文書である。自分たちにとって都合が悪いから受け取らなかったり、一度受け取っておきながらなかったことにしていいはずがない。

 一般公務員のような木っ端役人がそんなことをするとどうなるか? 公文書の不適正な取扱いをしたものには、以下のような処分が下る。

 ① 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。

 ② 決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。

 ③ 公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。

 政権がやったことは、上記でいえば、公文書の毀損、紛失、誤って廃棄、その他不適正に取り扱う、のうちのどれかであるはずである。

 モリ・カケをはじめとして、悪いことをやっているのは内閣総理大臣とその周辺だけである。なのにその防止策として、木っ端役人への規制は内閣総理大臣が発出し、厳しくなる一方だ。悪の秘密結社のラスボスと、それを倒す使命を受けた勇者が一人二役しているのだから、悪いことはいくらでもできる。

 こういう状況だから、総理周辺のわけのわからない公文書の取り扱いは以下のように、日に日に増殖するばかり。

 ① 官邸の入館記録は即廃棄。なきに等しい。

 ② 特区の非公式会合が開かれているようだが、当然のように議事録がない。

 ③ 首相と面会しているのに官邸側にも省庁側にも記録がない。

 政権が治外法権のようにやりたい放題ができるのは、なんといっても野党の数が少ないからだ。しかし野党は、「とにかく政権に反対」のパフォーマンスを繰り返すだけで一定の支持が得られるので、そこに安住している。それに物足りない人は警告のつもりで野党への投票を控えるが、野党は従前の方針のままでも一定票は入るのだから楽な道を選ぶ。中には野党が政権をとった時の大変だった記憶から、野党に投票しない人もいるかもしれない。筆者もその一人であるが。

 政権に対する若い人の支持率は高い。就職に少しでも有利なのは現政権、アルバイトの時給を上げてくれるのが現政権、強気の外交をするのが現政権! と思われているようだ。

 だがもろもろの矛盾をはらみつつも今回は、政権のやりたい放題に制限をかけるため、目をつむって野党に投票し、参議院をねじれさせることがぜひ必要であると思う。

 参議院選には熟考して投票していただきたい。