ムッ、む・む・む・・・。西沖の山石炭火力発電所で異変が起こった。石炭火力発電所の新設計画に対する環境影響評価手続きを行っていたところだった。石炭火力発電所新設の当事者である山口宇部パワーが、石炭火力発電所の新設計画に対する環境影響評価手続きを休止し、さらに準備書の取下げを願い出ることを発表してしまったのだ。この事業の出資者のうちの一つである大阪ガスが、本事業から撤退してしまうためである。
環境省では、石炭火力の発電システムが稼働することによって発生する二酸化炭素を少なくしたい。取り下げてくれれば、新設予定の石炭火力で発生する二酸化炭素量がゼロになるのだから、この動きを望ましいものとして歓迎しているようである。ただ、これは狭い了見だ。筆者は、事はそう簡単ではないと悲観している
エネルギーと経済全体から見渡すと日本に危機が迫っている。歴史的には、エネルギー問題は日本が近代化しようとした時から、日本のアキレス腱として存在し続けている。第2次世界大戦の引き金の一つと言ってもよいと考えている。
当時の世界は弱肉強食で、強い国は植民地を作りその国を実効的に支配していた。その有様を見た日本は、自らが食われてしまわないように強国になろうとしたのだが、そのためのエネルギーの源がなかった。今では敵対国の領地に爆撃やミサイルが打ち込めるが、当時の日本が侵入者の補給路を断つには、船舶輸送を艦艇により阻害するほかない。補給路を断たないままの陸戦は消耗戦となる。船を動かすエネルギー源としての石油がどうしても必要だったのである。
さすがに現代ではこのような心配はないが、危機は形を変えて迫ってきている。水力発電はこれ以上の開発を望めそうにないし、石炭、石油、天然ガスなどは、最終的には二酸化炭素を排出する。原子力は、災害が起こった時の影響が大きい。これでは八方塞がりである。
風力や太陽光は工業用としては使いにくい。家庭用電源なら騙しだまし使うことができるが、海外にモノを作って売らないといけない工業国日本にとっては、良い電源とはいえない。
現在の日本は食糧の自給率が低く、食料を輸入しないといけない。もっといえば、稼いだ外貨で石油や工業製品の原材料などを買っているのだから、ある程度外貨を稼いで、お金が循環していないといけない。
発電方式については必ず一長一短があり、しかも建設には反対が常につきまとう。筆者は、石油、石炭やガスばかりでなく、ごみなども燃やすシステム、原子力や風力、太陽光や水力と、ありとあらゆる発電方式をどれも実際に使えるレベルで、その技術や施設を保有しておかないといけないとみている。細かい比率調整はそのあとだ。
電気は使いたいが発電施設の建設には反対とかの意見が多い。自分の住居の近くとなるとわからないではないが、本気で対策しないと日本の場合はかなりあぶない。