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悲しき商魂ふるさと納税

曽野緋暮子

 平成の新しい制度「ふるさと納税」でネット検索すると、「ふるさと納税でお得な返礼品を貰おう」とか「A5ランクの肉が欲しいならこの市町村にふるさと納税を」等と、通販サイトと変わらないサイトが続々ヒットする。当初の主旨から逸れて、住民以外からの納税を多く集めようと、高額で魅力ある返礼品にする行政が散見され、指導が入ったそうだ。

 「ふるさと納税」は多くの人が地方で生まれ、その自治体から医療や教育等様々な住民サービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行っている。その結果、都会の自治体は税収を得るが、自分が生まれ育ったふるさとの自治体は出超となる。そこで今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」にいくらかでも納税できる制度があっても良いのではないかという議論を経て、「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として2008年に創設された。

 「納税」という言葉がつくが、実際は自治体への寄付である。一般的に自治体に寄附をした場合には、確定申告を行うことで、その寄附金額の一部が所得税及び住民税から控除される。しかし、ふるさと納税では原則として自己負担額の2千円を除いた全額が控除の対象となる。自分の生まれ故郷に限らず、どの自治体にでもふるさと納税を行うことができるので、それぞれの自治体がホームページ等で広告している。

 通常の税金は使われ方に注文が付けられないが、ふるさと納税はその趣旨や、集まった寄附金の使い道等を見た上で、自治体を選ぶことができる。特に寄附金の使い道については、ふるさと納税を行った本人が使途を選択できるようになっている自治体もある。

 私が、「ふるさと納税」を始めたのは2014年。東日本大震災後のボランティアの時に福島県で個人商店を営んでいる方達と知り合いになったことが発端だ。震災後3年経って何とか店を復活させたものの原発風評被害で物が売れない。現金の寄付も有難いが、やはり自分の仕事を通して収入を得たい、と言われる。当初は友人達に声をかけ商品を購入していたがある時、その市への寄付を思い立ち、市のH/Pを開いた。「ふるさと納税」の項目があり、応援している方達の商品が返礼品として記載されていた。

 「ふるさと納税」で税控除が受けられることは知っていたので、これを活用すれば支援が長く続けられると思った。市役所から「ふるさと納税返礼品」としての発送依頼がくることを、商店主にも喜んで貰えたようだ。ちょっぴりお得感のある支援だと思い、ボランティアで知り合いが多くできた宮城県でも「ふるさと納税」を申し込んだ。市のH/Pを開き、お店の様子やお店の方達を思い浮かべながら返礼品を選ぶのはちょっと楽しかった。返礼品に入っている市の復興状況の情報等を通じて、その市と繋がっているとも感じられた。

 しかし、昨年から自治体のH/Pにアクセスしてもふるさと納税専門サイトに誘導されてしまう。食品、スイーツ、肉等返礼品の種類別に自治体を検索できる。もちろん、自治体別にも検索できる。同じ返礼品でもサイトが異なると納税金額が異なったり、キリよく1万円と思っていても商品に合わせてか中途半端な価格だったり。本当にフツーの通販サイトと変わりない。何となく釈然としない。返礼品目当てではないと言うならば、「返礼品不要」とすれば良いようなものだが、応援する商店の売り上げを支援したいと言う思いから「不要」は選べない。

 ことしも馴染みの商店主から「曽野さん、いつもふるさと納税ありがとうございます。商品を送りますね。」と電話があった。「あ~元気そうだね、身体に気を付けて頑張ってね。」こういう会話がふるさと納税のメリットだと思い、これからも細々と続けていくつもりである。

ふるさと納税