月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

立ち遅れる日本、GAFAについて

司 高志

 筆者は時々、ライフビジョンの勉強会に顔を出す。あるときGAFAが話題になったことがあった。日本にはこのような企業が育ちにくいという意見があった。いずれはこの企業にも寿命が訪れるだろうとの意見もあった。だがこれらの企業に寿命が訪れても、そのあとに日本の企業が取って代わるとは難しいと思いつつ、組織の寿命に関して何かもやもやしたものが残った。ちなみにGAFAとは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの各会社の英語名の頭文字を並べた呼び名である。

 それからしばらくたってつい先ほど、新聞を見ると旅行サイトに公正取引委員会の立入検査があったとの報道があった。独占禁止法違反の容疑であった。「旅行サイト」とは、宿泊する予定日の複数の旅館やホテルの空き状況を調べて、安く予約ができるホームページのサイトである。このようなサイトは複数存在している。当然、旅館やホテルは一つの旅行サイトに登録するよりも、複数のサイトに登録した方が、利用者の目に触れやすいので、複数の旅行サイトに登録する。

 ここまでなら、独禁法違反を加速するような事態にはならなかったものが、複数ある旅行サイトの宿泊料金を一度に比較できるサイトが登場してしまった。これをうまく使えば、利用者は複数のサイトを調べることなく、一番安いところの料金で宿泊することができる。

 これに困った国内でも強力な旅行サイトが、自分のところの料金を一番安く設定しろとか、ほかのサイトと同額にしろとか、旅館やホテルに圧力をかけ始めて、どのサイトもみな同じ料金になり価格が高止まりしてしまう、という経緯で公取が立入検査に及んだようである。

 さて、この案件を見ているとサイト運営者の(ワル?)知恵をうかがい知ることができる。つまり、自分は競争しないで他人を競争させる場を提供し、その場所の使用料をいただくというシステムで、続いてその旅行サイト同士を競わせる場を提供するという、次なる者が現れた。で、それまで競争しなくてよかったわが身が競争させられそうになると、旅館やホテルに圧力をかけて、競争させられそうな状況自体を無効にしようとしたわけである。

 これは、いわば「自分だけ競争しなくてもよい」というポジションの取り合いで、そのしわ寄せで旅館やホテルなどの弱い立場の者が泣き寝入りさせられる。これでは何でもありの弱肉強食だ。競争すれば人々は暮らしやすくなるというのは、現在では弊害の方が大きいのではないかと思われる。

 さて、冒頭のGAFAに戻ろう。GAFAは日本の企業とは違い、優秀な者には高給を出す。そして、彼らを使って他人を競争させ、自分自身はなるべく競争の渦中に呑み込まれないように注意を払う。こうして一強を確保すれば、会社の寿命は相当に伸びるのではないかと予想される。パソコンのOSであるウインドウズを作った会社も、アンドロイドやiPhoneに押されながらもなかなかせこく商売を続け、先行の利を保ち続けている。

 もし、GAFAに対抗したいのであれば、AIが労働を奪うとか言っている場合ではない。むしろ積極的にAIを開発し、カーナビや時計、メガネなどにAIを仕込んで無料で配り、量子コンピューターでこれらから得られたビッグデータを解析して、これを使って商売をしていこうと考えるくらいでないと挽回は難しかろう。

 ここまで考えてから気が付いた。自分だけ勝てばいいというヤツがこれを先行開発してしまうと、結局今と同じ木阿弥に帰すことを。