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中抜き、ピンハネ社会で弱い者が損をする

司 高志

 今回も気分の悪くなる新聞記事が見つかった。仕組みの抜け穴に群がるハイエナのような連中がいることは承知しているが、現代日本でもまだ、ダニや寄生虫のような輩がウジャウジャいるのは無視できない。外国人の技能実習生にかかわる記事のことである。

 この制度は運用側が手抜きできるように作ってあり、ここに寄生虫が群がっているようである。制度の運用をわかりやすく示す公式見解がない。特に入国に際して必要となるお金やその後に関する記述がないのは問題で、以下は報道記事による見解である。

 外国人技能実習生を1人雇うと、企業は日本内の監理組織に年額6万円を支払うらしい。実態がどうなっているかは、運用側のホームページを調べても通り一遍の解説程度しかない。

 法令上は、<技能実習法>第二十八条 監理団体は、監理事業に関し、団体監理型実習実施者等、団体監理型技能実習生等その他の関係者から、いかなる名義でも、手数料又は報酬を受けてはならない。

 2 監理団体は、前項の規定にかかわらず、監理事業に通常必要となる経費等を勘案して主務省令で定める適正な種類及び額の監理費を団体監理型実習実施者等へあらかじめ用途及び金額を明示した上で徴収することができる。

 となっていて、監理団体は企業からしか収入がなさそうだが、実態上は現地の口入屋から接待を受けたり、口入屋から上納金をいただいたりと悪事を働いているようだ。これはもう、時代劇のあのセリフがぴったりの情景である。「お主もワルよのう」、「( ̄∇ ̄;)ハッハッハ、お奉行様ほどではございません」

 で、このお金は日本で働くことになる技能実習生が現地で前払いすることになるという。当然、数々の不正の代金が込みになっているので、法外な値段となる。

 雇用契約は、本来は雇用側と労働者の間で結ばれるべきものである。ところが企業と本人の間に中間管理団体が2つも入ってうまい汁を吸っているのだから、外国人技能実習生は、日本に来る前から多大の借金をしてしまっている。これは、日本側が現地に適切な募集機関を設けなかったことにより生じている弊害である。

 今の日本の発展は、人を安く使う制度を作り続けたことによって構築されている。今回も人を雇うのに何とか安く上げようという意志が透けて見えて、気分が悪い。

 外国人技能実習生といえば、福島原発事故による放射性物質の除染をさせていたことが問題になった。放射性物質を扱うことになるので特殊勤務手当が支払われるが、労働者に支払われるべき特殊勤務手当の中間搾取が後を絶たない。

 つい先日の報道でも、除染事業費の半分くらいの利益を上げて役員で総取りをしていた企業があった。競争入札で行えば適正利潤しか出ないはずが、下請けや孫請けを使って制度の不備を突いた悪事としか思えない。

 内部告発できる日本にあってさえ、このざまだ。外国人労働者の受け入れに際しては、日本国民の誇りや信頼を失うような姑息な行為を許してはならない。