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もらい事故にはご注意を!

司 高志

 本当によくわからないのが、森友問題である。
 本欄では常々、報道とは違う視点から問題の本質を明らかにすべく考察をしている。ところが、本質が全く見えてこないのが、森友問題の本質である。森友問題について、最初は森友学園に土地を安く売った財務省に政治家の関与があったか、なかったという単純な図式であろうと考え、森友問題は静観していた。しかし、こういう単純な事柄に関してはどこかで証拠が挙がってくるものだが、一向に事態は進展せず、材料が出そろったのかもよくわからない。
 森友問題の本質は、本質にたどり着かない要素がちりばめられていることである。今回は森友問題の本質が洗い出せない理由を考えてみたい。
 まずは、籠池氏の認識から。
 籠池氏は、自分がトカゲのシッポのように切られると考えているようだが、実際にはトカゲのシッポ未満である。トカゲのシッポとは、本体に悪いやつがいてそいつの犠牲になることだが、悪の本体がだれなのか、いるのか? いないのか? も疑問である。つまり、籠池氏はいろいろなところに働きかけ、功を奏していると思っているようだが、その実、周りはちっとも本気で取り合っていないようにしか思えないのだ。籠池氏の独り相撲、一人負け。決まり手は肩透かし。
 次によくわからないのが、財務省である。さすがにこちらは、官庁の中でも一段格上の役所でガードが固い。判断過程がブラックボックスの中にあり、外からはうかがい知ることができない。
 報道に引きずられて見えてこないが、あの土地の本当の実売価格とごみの撤去費用が表に出てきていない。大幅値引きのように見えているが、財務側に売りたい価格設定があって、土地価格とごみ撤去費用を適当に見積もって大幅値引きのように見せかけて、ごみ付きの土地をうまく売り抜けたという見方もできなくはない。
 豊洲の例でも明らかなように、ごみ付きの土地を買えば、対策費用を安く上げようとするのは人情だ。財務省はそんなことは百も承知で、織り込み済みのはずではないかと思う。
 ところで財務省職員も告発されているようだが、こちらはトカゲのシッポにされる可能性が高い。
 本件最大の攪乱要因、ジョーカー的存在が首相夫人である。本来的には人に疑われるような行為を慎み、公私を分けるのが普通で、地位があげれば上がるほどガードを固くしないといけないが、この人は全くのノーガード。自粛する気持ちが全くない。まさに常識が通用しない天然ボケだ。たぶん今でも反省していないだろう。
 とばっちりは、夫人付きの公務員である。首相夫人とともに告発されているが、職業人生から見れば、もらい事故。公務員は普段から公私の別についてある程度の訓練をしているから、ヤバいことはすぐにわかる。だがそこでためらうのは、夫人の行為をいさめれば、更迭されてその後の人事に影響すると思ってしまうことだ。黙って従っていればめでたく人事異動することもあるが、今回のように表舞台に出てしまうこともある。
 楽そうに見える公務員も楽でないことが多い。どんな職業でも長い職業人生にはこんな危機が一度や二度はある。もらい事故には十分ご注意を!