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錦の御旗の真偽を問う

司 高志

  “順番待ち”が優先されたのか、変な新閣僚が目立つ。明らかな実力不足や真っ黒会計の人がいても、なんとか乗り切れるのが現代日本の情けないところだ。その一つ。

 新閣僚が決まってから、世間には余り注目されないが、筆者には「おやっ!」と思う閣僚がいた。環境大臣である。

 この大臣は閣僚に就任するやいなや、「レジ袋の有料化」を言い始めた。普通なら官僚が止めるところである。またまた思いつきで人気取りをと思ったが、大臣と官僚の利害が一致したのか、止めるどころか両方で悪ノリをし始めた。

 レジ袋の有料化の次が、再利用しないプラスチックの廃止、そして太陽電池パネルの再利用とまで言い出した。いずれも再利用は環境に良いというイメージ先行、思いつきの施策で、もっとよく考えてからでないと発言できない代物である。

 ここで少々頭の体操をしてみたい。一番わかりやすい太陽電池パネルの再利用を例にとる。

 太陽電池は工場で生産し、設置場所まで運搬し、設置場所でセッティングする。ここに至るまでに、工場で太陽電池生産のためのエネルギーを使い、運搬や設置のためにもエネルギーを使う。太陽電池も発電してエネルギーを生み出すが、それは生産から稼働するまでに要するエネルギーよりも大きいのであろうか?

 こういうデータを出してこそ、太陽電池の有効性が説得力を持つというものだ。ところが実際には、詳細なデータが流布している形跡がなく、もしかしてイメージだけ?

 さらに、寿命が来た太陽電池を再利用するとなると、撤去し運搬して工場で再生し、設置場所まで運搬して据え付ける。その時点で再生したパネルの性能が以前と同等か上回っていれば良いが、それも検証したのであろうか。また、再生に必要なエネルギーと比べて、再設置して得られるエネルギーの方が大きいのか? エネルギー量的には、元を取るのがますます難しくなるように思う。

 次にプラスチックの再利用を考えてみよう。

 プラスチックの再利用も運搬回収にエネルギーを使い、再生工場での工程にもエネルギーが使われる。このエネルギーは石油を燃やして作るとすると、プラスチックという「物質」は確かに循環していくが、そのために石油資源を消費しているのである。

 環境に貢献すると言えば聞こえはいいが、実質本当に環境が守られているかは、科学的によく考えなければならない。単なるイメージ先行で「環境を守っているんだ」という自己満足の政策を進めてはいけない。科学的検証をキッチリやっていただきたいものである。