60年前の、私たちが中学生の頃、授業終了後にイナゴを捕まえ、それを売って図書館の本を買っていた。それが当時のボランティア活動だった。最近はPTAがベルマークを集めて学校の機材を購入しているという。小・中学校のボランティア活動も社会や環境の変化を反映したものとなっている。
ベルマーク収集による助成額の推移
現在広く行われている学校のPTA活動に、ベルマーク収集がある。ベルマークは商品の包装紙等についている「ベルマーク」を切り取り、学校や団体ごとに集めて財団に送り、1点あたり1円換算で貯まった預金(点数)分の教育設備品などが購入できる仕組みである。1960年に教育設備助成金が発足し、翌年1961年にベルマーク集めが始まった。その28年後の1989年に100億円突破、更に13年後の2002年に200億円を超えている。
毎年集められるベルマークの数は5億点(5億円)余りで、同額の教材を購入することができる。人気の商品はドッジボールやサッカーボールで、これらは子供たちが良く使うことから消耗が激しく、学校の予算が追い付かないためのようである。
参加団体で最も多いのが小学校で、全国の71%に相当する14,617校が参加しているという。私の住む江東区で確認したところ、44校すべての小学校が参加しているが、中学校は23校中 5校が、生徒中心で行われているという。
ベルマーク収集の現状
ネットで調べた集約に関する数字のベスト3校は下記の通りである。
都道府県 | 生徒数 | 集約点数 | 所用年数 |
神奈川県川崎市 | 724人 | 700万点 | 52年 |
神奈川県三浦市 | 356人 | 500万点 | 46年 |
神奈川県藤沢市 | 709人 | 400万点 | 43年 |
PTA役員が半世紀かけて行っているボランティア活動でベルマークを集め、教育設備を拡充するということの意味はあると思う。しかし、そのための親の負担はどうなのだろうか。
小学生2人の母親でありパートで働く私の娘が、ベルマークの大変さを嘆いていた。生徒が家庭から持ってきたベルマークを点数ごとに分け、集約する作業が大変な時間がかかるというのである。
参加校1万4千校で1年間の集約が5億円と報じられている。1校当たりでは3.6万円となり、小学校生徒数は約660万人だから生徒1人当たりに換算すると76円となる。
PTAによるボランティアの功罪
ベルマークができた60年代は敗戦から15年後であり、すべての物が不足していた時代である。学習教材などもノートは余白がないように書き、鉛筆は待てなくなるまで使い、封筒は開いて裏返して再利用する、そんな節約が普通だったのである。
それから55年が経過して経済や生活環境が大きく変化し、ものが溢れる時代となった。両親が働く家庭が増加し、ボランティア活動で費やした時間で得る経済効果と働いて得る時給を考えれば、ベルマーク分の額を寄付する方が負担は軽いはずである。しかしボランティア活動によってママ友ができ、ママ友との交流によって子育て等の情報を得ることができる。これらを天秤にかけると悩ましい問題のようである。
生徒のイナゴ捕りからPTAのベルマーク収集などへと、学校でのボランティア活動は変化している。ただしベルマーク収集はほとんどの学校はタッチせず、生徒は家庭からベルマークを持っていくだけで、後の作業はPTAが行っているようである。
生徒たちが行うボランティア活動は、生徒自身がその成果を実感ものとすべきである。いつの日か学校での生活を思い出した時、その中心の一つにボランティア活動があって欲しいと願うものである。
石山浩一
特定社会保険労務士。ライフビジョン学会代表。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。
http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/