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学徒ボランティア

音無裕作

 先日、わが町で祭を開催した。小さな町だがステージを作ったり提灯を飾ったりと、設備的には割と大掛かりなうえ、ほとんど全てを業者に頼らず市民で作業するので、準備には毎年大わらわである。幸い、役員だけでなく、大勢のボランティアの方々が協力してくださるので、とても助かっている。

 しかし、今年の暑さには参ってしまった。女性部や近隣の方々に用意していただいたドリンクや塩分補給などのおかげもあり、熱中症などで倒れた方はいなかったが、みなさん家に帰ってからどっと疲れが出たことだろう。会長は、「いや~昨日は熱中症になったよ。今朝起きたら頭がクラクラした」と言っていたが、それはおそらく朝の3時まで飲んでいたせいだと誰もが気付いている。

 今年の暑さは尋常ではなかった。このような気候では2年後の東京オリンピックが心配だという声が出はじめてきたが、たとえ今年ほどの猛暑日続きではないとしても、東京の7-8月にオリンピックをやるなど、正気の沙汰ではないと思う。報道規制がなされたかのようにあまり報じられなかったが、この夏の甲子園高校野球でも300人以上が熱中症になったようである。

 ところでいよいよ開催まで2年を切った東京オリンピックであるが、ボランティアの予定数が、当初の想定より足りないらしい。予算よりかなり金額の増えそうな開催費といい、いったいどういう想定のもとに誘致をしたのか、甚だ疑問である。

 足りないボランティアを補うために大学生ボランティアをより多く集めたいと、スポーツ庁と文部科学省は全国の大学や高等専門学校に、授業や試験に柔軟な対応を求めるよう通知したそうである。大学はただでさえ「就職斡旋所」のようになっていると言われているのに、この上さらに「強制徴募」というのでは、ボランティア(自主志願)の名も泣こう。学生にとって何が一番大事なのかわからなくなってきたようだ。

 当初の募集では2002年4月1日以前の生まれ、すなわち2020年の4月に18歳以上ということになっていたのだが、最近では高校生ボランティアにも頼ろうかという案がささやかれているとも聞いた。

 若いということは一般的には体力があるということにはなるのだが、その分、経験の少なさから無理をしてしまう危険性も考えられる。オリンピックという大舞台のスタッフともなれば、テンションも上がり、ついつい頑張りすぎてしまうかもしれない。

 おりしも、開会式の会場は国立競技場。かの『学徒出陣』による悲劇の再来とならないよう、願いたいものである。