月刊ライフビジョン | off Duty

西日本災害ボランティア出動日誌

曽野緋暮子

 7月半ばに参加した災害ボランティアでは酷暑で心が折れ、学生や若者に任せて涼しくなってから活動再開と考えていた。倉敷市真備町、広島市坂町、呉市天応町等で若者達が酷暑の中汗まみれでボランティアしている姿を、また有名人が激励に訪れる姿をマスコミ報道で連日目にし、やっぱり高齢者が出る幕ないなあと安心していた。ところが、マスコミが取り上げない福山市、尾道市、三原市等では夏休みになってもボランティアが集まらないらしい。

 ◆社協からの連絡で、8月初めに福山市の泥だしボランティアに参加した。住宅の裏手が崩れて流れ込んだ土砂が側溝に詰まっている。人一人がやっと通れるような狭い側溝なので人海戦術しかない。スコップで土砂を土嚢袋に詰めて、手渡しで住宅の表に運ぶ。そこから一輪車で土嚢袋置き場に運ぶ。車がひっきりなしに通る道路を、一輪車で土嚢袋を運ぶのも一苦労だった。10名のチームが2チーム。15分作業、15分休憩で何とか1日で作業が完了した。熱中症予防で半端ない水分と塩分を補給する。腎臓機能が強くない私は、日頃は塩分控え目で暮らしている。今夏の半端ない塩分補給でどうなるのかと一抹の不安を抱えている。

 ◆8月下旬、社協からの連絡で三原市に行った。高速道路を降りて進んで行くと沼田川が目に入った。豪雨当初、テレビで沼田川が氾濫して町が水浸しになったという報道があったことを思い出した。その後マスコミに出ないので不覚にも、被災地との認識が薄れていた。2階近くまで水に浸かっていたであろう家屋、今なお閉鎖している病院、スーパー等が被害の大きさを物語る。

 ここではボランティアセンターの指示で男性2名、女性2名のチームになり、県道に面した個人の住宅に向かう。土間と家の中の泥をかぶった壁を取り除く作業だ。リフォームするので壁の中の竹小舞(たけこまい)は残してほしいとのリクエスト。土間で石膏ボードを取り外し小さく砕いてゴミ袋に入れる。次に竹小舞を壊さないようにバールやスコップでドサッと土壁を落とし、その後土をならすヘラで泥交じりの土壁を取り除き、こちらは土嚢袋に入れる。竹小舞の間の土はドライバーや割りばしで丁寧に落としていく。

 防塵マスクと保護メガネが必須の作業だ。なかなか捗らない。翌日の夜、台風接近予報が出ているので当日出たゴミ袋、土嚢袋だけでなく家の周りにある土嚢袋も全部土間に入れてほしいとリクエストがあった。道路沿いで木陰もトイレもないので、昼食を摂るためにボランティアセンターに戻ったタイミングで、当日中に完了するために午後からは4名追加動員をして貰った。午後からは狭い階段に4名が並んでの作業は人口密度が高く、とても暑かった。リクエストは完了したが、年内にリフォームはムリだろうなあと心残りだ。

 ◆8月最後の土・日は尾道市に行った。。ボランティアセンターで男性4名、女性3名のチームになった。滋賀県から日帰り参加の若い女性が一緒だ。尾道市は坂の町で広島市と同じく土砂崩れの被害が多い。現地に行くには途中まで車だが、残りは一輪車にスコップ、鋤簾(じょれん)、竹ぼうき等道具を積んで、炎天下の坂道を徒歩で登る。

 登って行く途中で土砂に押しつぶされたような家屋が何軒かあった。土砂で抉られた斜面があちらこちらにある。今回の依頼は下方の家に流れ込み床下や庭を埋めてしまった土砂を取り除き、土嚢袋に詰めて、土砂崩れした跡にその土嚢を積んで、二次災害が起きないようにするというものだ。土嚢袋を下に落とすのは容易だが、上に運び上げるのは力が要る。と言うことで男性4名が担当。女性3名で庭や縁の下の土を取り除き、土嚢袋に詰める作業を担当。かなり骨が折れる仕事なので最後までバテないように、リーダーの指示で10分作業、10分休憩でスタート。最初は「もう、休憩?」と感じるインターバルだったが、暑さが増すに連れて時間設定は正解だったと思った。

 尾道市はゴミの分別が厳しく、木材を自然木と輸入合板を分けなければいけないという。処分にどんな違いがあるのか不明だが規則通り、ゴミの山を別々にした。縁の下の泥は最初は簡単にスコップで取れたものの、奥の方は固くこびりついているので鋤簾でガリガリ。家の壁にこびりついた泥も丁寧に落とす。こちらの泥も全部土嚢袋に入れて土砂崩れの後に積み上げる。この積み上げ作業が終了せず初めて、同じ場所に2日間行った。当家は80代の女性が一人暮らしで避難されているとのことで、畑の持ち主の30代の孫が依頼主代理としてボランティアを受け入れた。平日は会社、土曜日こちらの土砂対策、日曜日会社の土砂対策をしているそうだ。若いからできるとは言え、無理しないでほしいと切に思った。

 奇しくも友人が言った。「ボランティアできる曽野さんは幸せだよね。体力も気力もあるってことだから。」9月も体調と相談しながらできるボランティアをしていこうと思う。