月刊ライフビジョン | off Duty

平成30年度7月豪雨・現地被災ルポ!

曽野緋暮子

 7月5日雨。午後20時41分、土砂災害警戒情報の緊急エリアメールがスマホとタブレットに入って来た。東北ボランティア活動時に経験して以来の警報にドキッとした。これが平成30年度7月豪雨の始まりだった。

 翌6日は2号線が渋滞して、いつもなら30分位の距離に1時間以上かかった。高速道路が通行止めになり、JR在来線もストップしていたので車が多いのは仕方がない。2号線が1車線の市内はほとんど動かない。その夜、午後21時35分特別警報発表エリアメール、午後22時9分には避難勧告発令エリアメール、午後23時19分には緊急避難指示エリアメールが出た。しかし、避難場所の小学校は山際にあり、海抜は我が家より低い。しかも真っ暗な山道を通って行くことはリスクが多すぎる。2階のある我が家の方がずっと安全だと判断して避難せず。

 7日は在来線に加えて新幹線もストップ。県内各地で土砂崩れによる通行止めのニュースが次々と入ってくる。小田川の決壊で倉敷市真備町が大変なことになったとテレビが伝えている。車で通ることのある道路の青色標識や、お店看板の上部だけが水面から出ている。市内の工場が土砂崩れに遭い死者が出たとのニュースも入ってくる。豪雨と共に起きたことが余りにも広範囲で、重大過ぎて、呆然としたがまず、家族を守るために食料品の確保をと思い、近所のスーパーに行った。「物流がストップしているので品揃えができない。パンは避難所に優先的に回しているので品切れです。」と店内放送が告げる中で、当面必要な物だけ購入して帰宅。次々と県外の友人、知人が心配してメールやラインをくれた。気持ちが不安定な時にはこういう心遣いがとても有難い。

 大きなニュースはテレビや新聞から入るが、近隣の親戚や友人達の情報はメールやラインで確認する。岡山市内で川傍に住む親戚は、土手下の畑は沈んだけど家は大丈夫。同じ川の河口付近の親戚も増水があわやの所で止まってひと安心。総社市の友人は、見たことがないほど川が増水したけれど何とか止まって良かったと。倉敷市内の友人は、真備町に住む妹宅が2階まで浸水、妹は避難所暮らしで、昼間は自宅に通って一人で片づけをしている。手伝いに行きたいが道が狭いうえに自衛隊や消防隊の邪魔にはなってはいけないし、ゴミが一杯の道路は片側通行で大渋滞になっている。

 福山市内の友人は娘の家が床下浸水、車も浸水したので自分の車を通勤用に貸し、友人は娘の代わりにJAFに並んでいるとのこと。畑に土砂が入ったけど、という別の友人は落ち着いてから考えると言う。坂道の上の方に家がある尾道の友人は、なかなか連絡が取れなかったが避難所にいた。自宅横の斜面が崩れ、隣家が破断されて一人亡くなられたとのこと。尾道市は断水で当分風呂に入れない。会社の後輩宅にもお風呂難民の友人が泊りに来ているそうだ。

 おかげさまで私の友人知人には大きな被害はなかったものの、軽微とはいえない被害は予想外に広くて大きい。

 そんな中、福山社協からボランティア募集の連絡があり、15日日曜日に参加した。運よくJR在来線が間引き運転を開始したので、福山駅北口から神辺に設置のボランティアセンターまでバスで行くことができた。行先が駅家神辺地区と書いてあったが、割り当て表を見ると福山市内広範囲で行先が記載されていた。こんなに広範囲に被害が出ていたんだと驚いた。

 私の行先は駅家地区でどちらかと言うと山に近い。住宅の裏手が崩れて土砂が入り込んでいた。この土砂をおじいさんが操縦するユンボで一輪車に入れて貰い、決められた場所に運ぶ。土砂に埋まったために住宅の軒先が低くなっていて、何度も頭を打った。小川に架けられた橋の上やぼこぼこの狭い坂道を、一輪車で通るのはちょっと厄介だ。

 ボランティア作業は基本的に20分作業、10分休憩だが、豪雨の後は「暑い」より「熱い」がピッタリで、基本の作業時間はムリ!だからと15分作業、15分休みで実施した。しかし午後からは空気が「アツッ!!!」状態で、10分作業、20分休憩に軽減したものの、ボランティアのひとりが庇で頭頂を切り、救急車を呼ぶ事態が発生、その後別の青年が軽い熱中症に。こちらは休憩所で応急処置して何とかしのいだが、社協の担当者が30分早い作業撤収を決めた。私は申し込んでいた翌日のボランティアを、暑さに負けて辞退した。

 本当に「災害」と呼びたいほどの酷暑が今なお続く、ボランティアはちょうど夏休みに入る高校生、大学生の若者にお任せしよう。年寄りが出て行って二次災害を起こしては迷惑極まりない。広範囲な災害なので秋になっても人手の足りない所は随分残るだろう。

 今まで台風も地震も避けて通ると思い込んでいた岡山南部と福山地区だが、思わぬところで大きな拳骨を入れられた感じだ。災害は他人事、机上の空論だけでは済まないことを肝に銘じた。地元にいながら何も支援が出来ない身がもどかしいが、今はこれ以上の被害が出ないことを祈るばかりだ。