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政治にもフェアプレイ精神を

音無祐作

 本場アメリカのアメリカンフットボールリーグNFLで、注目の若手ランニングバック(RB)選手にレベオン・ベルという選手がいる。普通RBといったら、ボールを受け取るや否や電光石火の勢いで相手ディフェンス網をかいくぐりゴールを目指すのであるが、この選手のプレースタイルは独特である。敵と味方が入り乱れる混戦地帯の手前で、往年の名力士、舞の海の猫だましのごとく、あえて一瞬静止し索敵、相手ディフェンスの穴となる道を探し出し、うまい具合に守備をかわしてゴールを目指す。

 そんな風に“待ち”を作れば、何とかかわせると思ったのだろうか、一連のタックル事件での遅きに失した日本大学の対応はお粗末すぎるというしかない。

 日大フェニックスといえば、かつては故篠竹監督のもと、ショットガンフォーメーションという胸のすく勇ましいプレースタイルを得意として、日本一に君臨していた名門中の名門であった。昨年は久しぶりに大学王者に輝き名門復活の期待の声も高かったはずである。

 事件がネットで騒がれ始めたもののニュースにまではそう取り上げられていなかった時点で、電光石火の勢いで適切な対応を行っていれば、ここまで信頼を落とすことはなかったのではないだろうか?

 もはや、フェニックスだけではなく日本大学全体の信頼が失墜しており、全く関係のない法学部のアメフト同好会までもがバッシングを受け、せっかくの付属高校の野球の活躍さえもかすんでしまいそうである。他の学生たちには罪はない。

 一方、これまで様々な不始末や失言を犯しながら、のらりくらりとかわし続けられているのが、第2次安倍政権。以前の反省が生きているのか、おなかが痛いと途中で投げ出すことなく、どんな失態ものらりくらりとかわしていれば、やがて大衆は忘れてくれるとタカを括っているのだろう。

 実際、メディアの一部や街の声では「国会では重要法案の審議を進めるべき」というような意見も出始め、支持率もジワリと回復し始めている。

 しかし、信頼のおけない人物たちが、やはり信頼のおけないデータなどを基準にした法案などを審議したところで、この国が良い方向に進むとはとても思えない。

 裁判員裁判の辞退者が深刻な割合に達しているとのことであるが、むしろ政治の失態こそ、一般の有権者が審査や裁きに直接参加できる仕組みを充実させるべきではないだろうか。政治への関心向上にも役立つことだと思う。

 われわれ有権者は、けっしてかわされることのないように、知識と判断力を磨き、しっかりとディフェンスを固めなければならない。