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東京だから問題なのか

音無祐作

 筆者が組合役員になりたての若い頃、連合の平和行動で沖縄を訪れたことがありました。着いた当日、まずは現地の同じ産別の方々から歓待を受けたのですが、さすが南国の方々、初対面だというのに、歳が近かったということもあり、朗らかで温かいもてなしに、あっという間に仲良くなり、2次会、3次会と盛り上がっていきました。

 そんな中で、今でも恥ずかしくなりますが、沖縄に関する知識が欠如していた私は、あなたたちは子供の頃、「アメリカ人」だったんだろというようなことを言ってしまいました。

 今にして思えば、怒られても仕方がない無理解ですが、そこはおおらかなウチナンチュたち。「ガハハッ」と笑い飛ばし、「本土の人間は、だいたいがそんな事言いよる」と言いながら、その後は懇切丁寧に占領下の沖縄のこと。自分たちは日本人でありながら、日本人でもアメリカ人でも無いような時代を生きてきたことを説明してくれました。

 だいぶ昔のことでもあり、どんな話を聞いたか、今となってはろくに覚えていませんが、とにかく自分が何も知らずに、過ごしてきたということを、ひどく恥ずかしく感じたことだけは、忘れられません。

 先日、沖縄を舞台とした「FENCE」というドラマを見ました。WOWOWオリジナルのドラマなので、知名度は低いかもしれませんが、米軍基地や、日米地位協定の問題などについて、とても分かりやすく捉えた良いドラマでした。ぜひ、全国区の地上波でも放送してほしいものです。

 近頃、東京多摩地区を皮切りに、水道水となる井戸水などから、有機フッ素化合物のPFASが高濃度で検出されていると騒がれ始めています。主に米軍基地が汚染源ではないかと思われているそうです。

 最近になって騒がれ始めているPFASですが、先述のドラマの中では、PFASの一種であるPFOSについて、こんなやり取りがありました。

 自分の別宅アパートを、主人公である部下の編集者に貸している編集長。ある日部屋にやってきて、冷蔵庫を開け、水の買い置きが無いことに気づき、「お前、水道水飲んでんのか」と、驚きます。

 訝る部下に対し、基地のある方向の窓を指差しながら、「PFOSだよPFOS。アメリカじゃ大問題になったのに、ここ日本じゃ立ち入り検査もできない」と、まくしたてます。

 沖縄では、かなり以前からの周知の事実なのでしょう。なのに、私たちの多くは、東京での問題が明るみに出るまで、PFASもPFOSも、問題視どころか、存在さえ認識してきませんでした。

 5月は、サミットのおかげで広島への想いを深めることができましたが、今月23日には沖縄「慰霊の日」がやってきます。ドラマの中でも、終始語られている事ですが、米軍基地問題は、「沖縄の」基地問題ではありません。

 そのことを改めて認識するためにも、1945年春から初夏の沖縄がどんな状況だったのか、その後の沖縄がどんな歩みを歩んできたか。いや、琉球が日本に編入された歴史から勉強して考えねばならないと思います。


 音無祐作 ライフビジョン学会会員