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トマホークより給食補助を

音無祐作

 最近、自治体による、給食費の免除・無償化の動きが広がっているようです。実施できる自治体の数はまだ多くなく、財政状況などにより、小・中学校だったり、小学校だけだったりするようで、地域間の格差が気になるところです。

 とはいえ、給食費の集金には、先生方も苦労するケースもあると聞いたことがありますので、教師の働き方改革にも役立つ、歓迎すべき動きだと思います。

 地方選挙を前にした予算審議等では、防衛システムの拡充や子育て支援策などが論じられていましたが、前年度比で1兆4000億円余りを積み増した防衛費に較べ、子育て支援に関連する予算は、こども家庭庁という新たな組織が創設されながらも、昨年度の関連費用と較べると、1200億円余りの増額との事。15歳以下の人口1465万人で計算すると、一人あたま年間8,200円足らずです。出産・子育て支援や教師の働き方改革など、多様なビジョンが語られていますが、果たしてどこまで実現でき、どれだけの結果に結び付けられるのか、疑問を感じてしまいます。

 先頃の厚生労働省の研究機関による予測では、出生率の減少ペースは加速し、2070年には、65歳以上の人口が4割に至るとの事です。もっともその頃には、世界的な人口爆発により、むしろ人口減少は理想とされ、「高齢者」とする年齢も大きく繰り上がっているかもしれませんが、日本という国や民族をミクロ的視点で見れば、出生率の減少はここらで食い止めるべきなのかもしれません。しかし、子育て関連予算の増額幅を見ても、国会での審議内容などを見ても、現在の国の政策で、子どもを産み育てようとする若者が増加していくとはとても思えません。

 国がダメならということで、冒頭の給食費のように各自治体があの手この手で、子育て支援に努力をしているようですが、自治体単位の対策では、結局は子育て世代の奪い合いとなり、根本的な解決にはつながりにくいという話もあります。

 幼少期の支援を充実させ、待機児童ゼロを謳い、多くの子育て世代の転入に成功した自治体が、数年たって、中学・高校の不足により、混乱が生じている例があるとも聞きました。

 戦争にならないように軍備を整えるといわれますが、軍備というものは、こちらが揃えれば、あちらも揃える。潤沢に揃ったところで、ちょっとした行き違いや綻びから、争いが生まれるというもののような気がします。

 日本には、少子化の他にも、資源の問題、食料自給率の問題、これからの産業の問題など、検討すべき課題が山積しています。国の借金が膨らむ中で、貿易赤字がこの先も膨らみ続けるようであれば、国家存亡の危機すら見えてくるかもしれません。

 予算があれば、子どもが増えるというものではないとは思うし、子どもが多くなれば、国が豊かになるというものでもないかと思いますが、軍事兵器を充実させるよりも、本当の意味で国民皆が豊かさを享受し、他国へもいろいろと貢献する余裕があり、「あの国とは仲よくした方が良いな」と思ってもらうことこそが、真の平和や安全につながるのではないでしょうか。