月刊ライフビジョン | off Duty

災害まで儀式にする役所仕事にNO!

曽野緋暮子

 隣町の社会福祉協議会から8月8-9日に豪雨の被災地、福岡県朝倉市杷木地区にボランティアバスを出すとの連絡を貰った。参加申込したものの台風5号の影響で、自宅地域も大雨洪水警報などが発令されていた。杷木地区のボランティアセンターも8月7日までの数日間、台風のため閉鎖だったそうだ。被害が広がっているかもと思いつつバスに乗った。

 朝倉市に近づくと2階だけが見えている家屋や、明らかに土砂に押し流された家屋、土手からずり落ちかかっている空き地対策の太陽光パネル、橋桁に引っかかっている倒木等が見える。周辺を重機で片づけても、個々の住宅の泥は人手で片づけるしかないだろう。当事者には気の遠くなるような話だと思うと胸が詰まる。

 「柿の里杷木」の看板が散見される。こんなに雨が降り続いても柿はちゃんと収穫、出荷できるのか、等々思いを巡らせるうちに大分県日田市の宿に着いた。ニュースでは日田市も被害が多く出ていると聞いていたが、街中の被害はほとんどなく、宿の方達から「私達の代わりに頑張って」とのエールとお茶のペットボトルを頂いた。

 9日の予報は前日から雨だった。早朝からの雨が小止みになって、何とかカッパで乗り切れそうと思っていたところ、昼食調達にコンビニに立ち寄った頃から物凄い豪雨になった。ワイパー全開しても対向車のライトがぼんやりわかるほどの白い雨だ。ボランティアセンターに着くと何台も車が停まっていて、別の場所での待機を指示された。その後も雨は止む気配がなく、大雨避難勧告が出てボランティアセンター閉鎖、ボランティア中止となった。

 何もしないで帰るのは余りにも悔しく残念なので、地元の道の駅で買い物に。ボランティア中止を言われた多くの他団体も同じ考えのようで、かなり賑わっていた。地元の野菜、果物、飴、地酒等々買い込んだが、作業しないで帰るのは本当に残念だった!

 それにつけても、前日のことが悔しく思い出される。

 ボランティアバスは8日の早朝に出発すれば午後から作業に取り掛かれるはずだが、出発式をするとのことで8日の10時半、県庁に向けて出発した。「出発式後すぐ出ますので昼食はバスの中で済ませてください。」との指示があり、12時過ぎに県庁着。「出発式は13時なのでそれまでゆっくりしてください。」ゆっくりと言われても、ボランティアスタイルだし、昼食済ませてるし、県庁のロビーでは見るところもないし、気温35℃の猛暑で周辺散策もムリだし。皆、何となくウロウロ。

 12時50分ぐらいに集合がかかった。「皆さん、ここに並んでください。」マスコミ数社のカメラもスタンバイ。クールビズを知らない(?)エライ人達がネクタイスーツ姿で正面に並ぶ。皆揃っているのに始まらない。

 司会者が「13時からなのでもう少し待って下さい。」「あと5分です。」「いま58分なのでもうちょっとです。」「59分です。もうすぐです。」何でカウントダウンしているんだろう?「ふざけんな! このクソ暑い時になに待たせているんだよ」と思わず小声で毒づく私。隣にいた若い女性が「いまどきは働き方改革で時間外管理が厳しいから、時間外が1分でも発生するとダメなんじゃないですか」と言う。「管理職は関係ないんじゃないの」と私。「見送りで手を振る人達が関係あるみたいですよ。」

 言われて周囲を見ると確かに、数十人の一般職らしい人達がいた。別の男性が「ここにいる人達がいなければバス代が支出されないから我慢、我慢」と笑えないジョークを飛ばした。その後型通りのセレモニーが終わり、頑張ってくださいの手振りを後にして出発した。

 公共のお金を使わせて頂くってこういうことなのか? このゆる~い儀式こそが、改革すべき働き方ではないのか。労働奉仕はできなかったけれど、またひとつ勉強になりました。