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少子化を止めるな!

司 高志

 タイトルを見て「おやっ??」と思った方は正解です。

 「少子化を止めろ!」とか「少子化対策を止めるな!」ではありません。

 「少子化を止めるな!」です。少子化は止めてはいけません。

 「エッ? 何を言っているんだ」と思われる方もいらっしゃるでしょうから、そのわけを説明していきます。その理由は二つあります。

 ではまず、一番目から。

 人間以外の生物だと、個体数は、自然環境に影響されて増減します。環境が良くなれば、個体数が増えて繁殖します。環境が繁殖に適さなくなれば、自然と個体数が減っていきます。

 人間以外の生物は、自然環境の影響をもろに受けるので、自然環境に影響されて個体数が自然に決まっていきます。

 では人間はというと、自然環境に影響されますが自然環境に作用することもできます。現在では、石油などの外部から得られたエネルギーを活用して、耕耘(こううん)、原野の農地化など自然に働きかけ、食料を生産することもできます。

 河川の経路を変えて、飲み水を確保したり、水の有害成分を取り除いたり、田畑に給水したり、大都市に水を届けるなど自然への作用は決して小さくはなく、地球温暖化などの地球環境問題を引き起こせるくらいの大きさになってきています。

 しかし、人間に立ちはだかるのは自然環境ばかりではありません。社会環境が自然環境以上に影響を持つようになってきています。人間以外の生物ならば、個体数に影響するのは自然環境だけですが、人間だとそうはいきません。自然に影響を及ぼして自然を変えてしまえるのは、人間が集団で生活しているからです。ここに社会の規範やルール、秩序が発生し、人間の行動を決める大きな要素となっています。

 人間以外の生物が持たないもの、いわば、人間だけの固有な社会システムのひとつが経済であるといってよいでしょう。お金の「ある」、「ない」が生活に大きな影響を及ぼします。

 現在の日本では、社会環境は、個体数が増える、つまり人口増には不向きな環境になっており、ブルドーザーや重機で押していけば、なんとかなるというものでもなく、複雑に絡み合った環境を変えることは、相当に難しいと言わざるを得ないでしょう。通常の方法では打つ手なしの状態だと思います。

 二番目が政治の問題です。社会環境の改変ができない大きな理由は、与党の政策にあります。

 与党の人たちは、古い家族観で本来は国でなんとかしないといけないことを、家族で解決させようとしています。ゆえに、個体数が少ないのも家族でなんとかしろと言っているわけです。

 夫が働いて妻が専業主婦、子供が2~3人いるという家庭のモデルにおいて、夫の給料を、年功序列の破壊、成果主義、職能給、派遣法などで下げまくっておいて、なにもしなかったため、モデルと実像の差異が激しくなり、少子化はどんどん進んでいます。

 与党の政策は、家族観が古いうえに、社会問題は家族でなんとかする、援助はしない、という基本スタンスであるため、いくらやってもお金をつぎ込んでも成果は上がりません。それどころか、DEN2やPソナのように、公金中抜き、チューチュー甘い汁を吸う企業ばかりがはびこり、最終的にはお金の無駄遣いです。

 現政権の政策は、すでに子育てしている人への補助で、これから子供をという人には、背中を後押しする機能はありません。

 これから子供をという気になる、という視点での私の考える異次元の少子化対策は、1)22歳までは、子供の誕生日ごとに毎年100万円進呈。2)移民を1000万人単位で受け入れ。3)労働組合に補助金――くらいのことをやらないと、だめだろうと思っています。

 ①は、説明の要もないでしょう。金銭的支援を行うならこれくらいやらないとだめです。

 ➁は、日本国民にはもう熱がないので、ほかの民族を日本国民として受け入れ、熱量を上げて、デモやスト、政府への抗議の仕方を移民の人から学習する。徴税もするが選挙権も与えて、選挙権の行使の仕方から選挙への心がけを学習する。

 ③は、派遣法などで労働組合から漏れている人を労組に組み込み、権利意識を醸成し、さらに、お上の補助金を受ければ、決算しなければならず、否応なく活動しなればならなくなり、無理やりにでも実践行動を通して学習する。「補助金もらって組合活動などできるか?」という正論が当然あると思いますが、このままだと、労組は、少数の正社員が残り、機能としては絶滅危惧種となる。座して死を待つよりは、あがいてみる方が良いと思うのです。

 このくらいのことをやらなければ、このままでは、将来日本国は、人々の熱量が最低レベルになるまで冷え込むことでしょう。