月刊ライフビジョン | off Duty

「疑心暗鬼」と「自己判断」

曽野緋暮子

 昨年秋に一旦減少したコロナ陽性者がどんどん増えていたが、行動制限がかからないこの年末年始は旅行や帰省で公共交通機関が混雑したようだ。他人事ではなく、我が家も3年振りに娘一家が帰省した。ギリギリまで決断を迷っていた娘は慌ただしかったようだが、高齢夫婦で淡々とした年末年始を送っていた我が家も3年振りに引っ張り出す寝具、食器他の日用品。食事も育ち盛りの子供が食べることを考える。正月3日間はどうせ動かないからとお節料理と雑煮だけで過ごしていたこの数年だが、いつも手抜き掃除にも力が入る。そんなこんなで美容院の予約までキャンセルする羽目になった。

 日頃は一日1回で済む洗濯機は2回-3回と回し、日頃使わない部屋のエアコンも一日中稼働する。電気代が上がる、水道代が上がる、怖いなあ。でも、子どもの活気と同居する非日常を楽しまなきゃあ(笑)

 コロナ以前は毎年、娘が帰省したタイミングで幼馴染の10人ほどが我が家に集まっていたが、コロナ感染を意識した今回は自主規制が働いて毎回1人~3人位の時短分散型のお茶会を数回と、リアルでのお喋りを楽んで満足したようだ。その後、娘親子が帰宅して2週間以上経ち、互いにコロナ感染していないことを確認してホッとした。皆が集まることの後ろめたさ、その後の感染確認作業が早くなくなると良いなあ。

 そんな中を今月27日、今年の5月8日からコロナを感染法上での扱いを季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げることが発表された。マスク着用は屋内外問わず自己判断とか。「濃厚接触者」の規制がなくなることは日常生活を送るうえで助かるが、簡単に入手できる治療薬があるわけでもないのに、いきなりの引き下げは怖いなあ。

 法律が変わっても生活のルールはどうなのか? 今はコロナ陽性者が出ると幼稚園が休園、小学校がクラス閉鎖になっている。以前のように兄弟は濃厚接触者だから休むようにとは言われないらしいが、「できたら休んで」というのが本音であり、疑心暗鬼の仮面は継続するのではないか。高齢者施設や病院で独自に面会の規制を実施できるのだろうか。自己判断という言葉に私達は右往左往することになりそうで、やっぱりマスクの買い置きを止められない。

 しかし、期待できることもありそうだ。

 先日、大学で緊急救援、ボランティア等の講義をしている友人とランチをした。毎年新学期の最初の講義で学生達にボランティアの体験を書かせると、2020年までは災害や地区の清掃等書かれていたが、2021年になると地区清掃等が数件となり、2022年には全くなかったそうだ。コロナ感染予防のため屋外作業でも人が集まることに規制がかかった影響だろうと残念そうに友人が言う。このままだとボランティアを実体験しない人達が増えて泥臭いノウハウが継承されないのではと心配していた。「自己判断」と言う逆に難しい規制があるが、自主的に動けることで地域でのボランティア活動などが復活すれば良いなあと、少し明るい気持ちになった。