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定期的な自動車教習の機会を

音無佑作

 先月、痛ましいバスの事故が起きました。現時点での分析では、どうやら長い下り坂の走行でブレーキが過熱し、フェードと呼ばれる現象が発生したためではないかと報道されています。

 私も昨年、うっかり4輪とも放熱性の低いドラムブレーキの旧式乗用車で、箱根の帰りにターンパイクを選択してしまい、エンジンブレーキを使用しても抑えきれないスピードに、ハラハラしながら、下山し、肝を冷やしました。

 エンジンブレーキとは、エンジンと変速機の仕組みを利用した「行為」であり、そういう名前の「装置」ではないのですが、よくある教習所での笑い話として、「エンジンブレーキって何処についているんですか?」という質問を受けると聞いたことがあります。

 バスやトラックなどには、乗用車のエンジンブレーキよりも強力な排気ブレーキというシステムもあるのですが、普通免許の教習では教わることはありません。

 しかし、一昔前に普通免許を取った人が運転できる、いわゆる4トンと呼ばれるクラスのトラックなどでは、排気ブレーキを併用しないと、危険な場合もありますので、あらかじめ知識が無ければ、恐ろしいことになります。

 乗用車も、近年は安全性の確保と装備の充実などから、重量が増加しており、2トン近いようなモデルまであります。いくら冷却に優れたディスクブレーキを装備しているとはいえ、そういった車で下り坂をDレンジのまま、100%フットブレーキに頼って、高い速度で運転するのは危険かもしれません。

 これまでも、これからも、車は飛躍的な進歩を遂げていくことでしょう。しかし、便利な機能が増える一方で、得るべき知識も増やさなければなりません。メーカーは、違和感が無いように努力するでしょうが、かつてのエンジン車からハイブリッド車、そして電気自動車へ変わっていく事で、運転や管理の仕方も変わってくることでしょう。

 一部の電気自動車では、モードの選択によって、ブレーキペダルを使わずに、アクセルペダルだけで運転できるワンペダル走行をすることもできますが、長年、アクセルとブレーキを使ってきたユーザーが、簡単に頭を切り替えられるのかどうか、疑問です。かつて友人が、「マニュアルしか運転したことが無いので、ペダルが2つしかないオートマ車は怖くて運転できない」などと言っていたのを思い出しました。バッテリーを有した、電動車ならではの危険もあるようです。

 先月、フロリダでは、ハリケーンで水没した電気自動車が、時限爆弾のごとく、被災から数日たって、燃え始めるという事故が何件か発生したそうです。消火処理には特別な技術とガソリン・ディーゼル車の何倍もの水や消火剤が必要とのことです。

 塩水に浸かったバッテリーが化学変化を起こしたか、ショートによってじわじわと過熱したかなどの理由がありそうですが、ガソリンは消火が大変だから、インディカーレースには、消火しやすいアルコール燃料を使用するというほど、安全にこだわるアメリカのモータリゼーションにとって、今回の電気自動車の発火現象は衝撃ではないでしょうか。

 自動車は便利なものですが、使い方を誤れば、凶器となります。にもかかわらず、車の使い方を教わるのは、人生に一度、最初の免許取得時だけという人がほとんどです。よく、高齢者の運転ミスが取りざたされますが、データでは若年層の運転ミスも相当に多いとのこと。新しい技術の体験や知識の習得、そして安全な運転技術レベル確保のためにも、定期的なトレーニングの機会を設けることが、必要ではないかと思います。