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外務省は在外邦人保護を実施せよ!

司 高志

 現在、ロシアとウクライナが交戦状態にあり、非常に緊迫した局面となっている。

 こうした中で、我が国はロシアに対して経済制裁を行っているため、ロシア国内の邦人は、クレジット決済ができず、現金も手に入らないため、生活に困っている。また、ロシアから日本に帰国しようとしている邦人も帰国の手段がなく、困り果てている。

 本稿では、経済制裁の良し悪しやウクライナへの支援への考察は、行わない。ロシアにいる邦人の保護についてのみ述べる。

 なぜ、この点に注目しているかというと、昨年12月に外務省が獲得した補正予算には、「在外邦人の支援」と「大使館等の機能強化」で8億円の予算がついているからだ。

 この原稿は、3月も残り少ない時点で書いている。あと4,5日しか残ってないというのに、補正予算を使った形跡が、全くない。補正予算は年度内に使い切るのが、通常だ。

 私の見立てでは、名目上は邦人の支援が一番最初に挙げられているが、これはほとんどやる気はないのだろう。そして大使館等の機能強化の方は、おそらく、文面からすると自分たちの勤務先の防御力を上げることになっているが、実は勤務先の住み心地をよくするために使おうとしているのではないか? おそらくこっちがメインだろう。

 この構造に既視感がありませんか?

 私には、コロナの対策と全く一緒に見える。コロナの対策をよく思い出してほしい。10万円とかは配ったりしたものの、補正予算は国民のためには使わず、国民を助けるつもりなんて全くない。とにかくケチケチ政府だった。そればかりではない。アべノマスクとか、ゴー・ツゥー・イートだとかトラベルだとか、個人的つながりや見返りのある企業・業界へのバラマキは大いにやろうとした。今でもケチケチ精神は受け継がれ、国民のためにお金を使おうなんて考えてないだろう。

 ロシアやウクライナにいる人たちは、外務省の勧告や忠告を無視して危険地帯に行ったわけではない。不可抗力として、こういう状態に巻き込まれてしまっただけだ。これは個人の責任に帰するものではない。

 この国はまったくどうなっているんだ。邦人の支援とか国民を助ける名目で補正予算を確保してはいるが、結局自分たちのために使っているではないか。邦人支援の予算は繰越でも何でもして、邦人を保護しなければだめだ。

 さらにもう少し言っておかねばならない。外務省がポンコツなのだから、政治家がもっとしっかりしないといけない。だが、政治家も全く機能していない。与党でも野党でも、どっちでもいいから、だれかが外務省に責任もって、邦人支援をさせなければならない。このままでは、予算だけせしめて邦人の保護をしない、ただの害務省だ。