月刊ライフビジョン | off Duty

権利の連鎖、貧困の連鎖

曽野緋暮子

 「暑気払いにはお喋りランチ」といつもの顔ぶれ。ひとりが退職後農業に目覚め、玄人はだしの桃を作るようになり皆にふるまうと言うので、会場はショッピングプラザ的な商業施設の屋根付き無料駐車場となった。いつもの「ちょっと豪華」ではないが、お喋りがメインディッシュなので、まあ、いいか~。
 M子がまず近況報告。9月が出産予定の娘がもう産休と言う。「私達の時は出産が予定日より遅れたら困るのでギリギリまで働いていたけれど、今は出産予定日を届けたら産休が決まって、その日から休んで下さいと上司から言われるのよ。予定日がずれても問題ないらしいのよ。ビックリよね~」。M子の娘は市役所勤務だ。「やっぱり公務員は優遇されているよね~~」「友達の娘は中学校の先生で、3年の育児休職を取っているんだって」。「先生って3年もブランクがあってもできる仕事なのかなあ~」。もっとも、私がかつて勤務していた所謂大手企業でも、育児休業中に妊娠して結果的に3年間育児休職後復帰した後輩がいたなぁ。
 先日、女性国会議員が公用車で保育所の送迎をしているとマスコミに取り上げられた。賛否両論があったがルールに則った運用であり、そこを規制すると働きながらの子育てはムリと言うことになるだろうとお咎め無しになった。働く女性の子育てという観点からは慶賀に堪えないが、それが公務員や大手企業の正規社員限定の運用に思えて、ちょっと引っかかる。非正規でなおかつ時給で働く人には考えられない話だ。もともと政治は人口減少社会を憂いて子育て支援策を講じてきたはずだから、親の職業で出産育児に公・私、正・非の差があるなんてナンセンス。生まれる前から格差が固定され再生産されている。えらい誰かさんは「どこか一点でも風穴が開けばだんだん皆に広がっていく」と話すが、岩盤規制は格差の川下にまで扉を開いてはくれない。

 したがって現代の職業選考要因は仕事の好き嫌いは問題外。公務員か大企業に入って格差社会の上位に立ち、子へ孫へ優位の連鎖を送ることが大切で、そのためにはまず有利な学校に入れなければ…。
 若い頃からテニスやバドミントンが得意だったT子は、運動が苦手な孫のテニスやバドミントンに付き合っている。なんでも孫が通う中学校では5教科の成績が良くても体育、美術、音楽の成績が良くないと内申点が貰えないとか。娘が非正規社員で娘の夫が中小企業で働くJ子は相続するお金は残らないョと言って、塾に行きたがる孫にお金を出している。「もちろん、送迎も私達夫婦でやっているのよ」。
 現代ジジババの孫育て事情、このお節介は何十年後に役に立つのかなあ~? わからん!