論 考

匿名社会の後進性

 魯迅(1881~1936)は、国民党や軍閥の卑劣な包囲網にあって、命を狙われていたから、ペンネームで言論を展開するしかなかった。50いつくかのペンネームを駆使した。

 しかし、論調を見れば、魯迅が書いていることはわかる。身辺安全のためには、沈黙するしかなかったが、断乎として言論活動を貫いた。

 SNSの時代、誰でも自分の見識を発表できる。結構なことだ。

 しかし、それが民主主義や、社会のつながりを充実する方向に作用しているだろうか。むしろ、反対へ傾斜しているみたいである。

 わたしはペンネームや匿名を好まない。つたない見識であろうとも、自分の責任を基盤として見解を発表するべきだと考えるからである。