月刊ライフビジョン | off Duty

危機を身近に感じる日々

曽野緋暮子

 8月になったらランチや日帰り登山に行けるかもと、ちょっと期待していた。ところがとんでもない酷暑に続き連日の大雨。夜中に緊急アラートが鳴り響き、3年前の西日本豪雨を思い出してドキドキしたが、運よく我が家近辺では大きな被害は起きなかった。

 酷暑と大雨で、コロナと関係なくステイホームとなり、これまた鬱々とした日々だった。天候に気を取られている間にオリンピックが始まっていた。大雨情報よりオリンピックが優先される報道ってどうなのとブツブツ言いながら、ネットで大雨情報を確認しながら各地の友人と連絡を取り合い、大きな被害がないと知ってひと安心した。

 テレビニュースでは、オリンピック会場付近での記念撮影や沿道いっぱいの応援の混雑が映されている。人の流れが抑えられていない。聖火リレーに始まるオリンピック騒動で、コロナ感染拡大は当然だろうなあ。それに夏休み、盆連休もあるよね。

 ある日、LINE既読スルーが続くT子から珍しく電話がかかってきた。関東に住む息子がコロナ感染したそうだ。38.5度の発熱が続き、医院でのPCR検査で陽性が判明。医療関係者である妻はワクチン接種済で陰性だった。子供も陰性だった。自宅療養を指示された。高熱が続き血中酸素濃度が92になったが、続けて自宅療養の指示。酸素濃度が88になった時、入院の指示が出たが、入院先決まるまでさらに1日の自宅待機。翌日、運よく設備の整った大病院に入院できたそうだ。「息子のコロナ感染が判明してから心配なんだろうね、嫁が毎日電話をしてくるのよ。私はワクチン接種が済んでいるからいつでも駆け付けるよ、と励ましてね。」LINE電話でやつれた顔の息子と話ができた時にはホッとしたとT子。病院が満床で救急車が右往左往して大変な状況だと、ニュースが報じる現実を感じた。

 でも、都会は病院を探せるだけ良い。私達の地域では入院設備のある大きな病院が1か所だけだ。ホテルも1か所だけ。満床になった時どうするんだろうなあ? このご時世、近隣の市町村で受け入れてくれるのかなあ? 考えても仕方ないけれど不安はつきない。

 山仲間のMさんから母親が亡くなったと訃報メール。ここでもコロナの影響があった。母親は二年前から特養に入所していた。体調不良で特養のかかりつけ医の病院に入院するも、その日に亡くなられた。ところが入所していた特養でコロナ感染者が1名出ていたため、入院時にPCR検査をした。その結果が出るまで遺体は動かせず、葬儀の段取りもストップしたままだった。翌日15時に陰性の知らせを受けて葬儀の段取りが始められたが、緊急事態宣言下なので県内に住む子、孫だけの葬送だったという。

 今までは実感がなかったが、危機はめちゃくちゃ身近になってきた。でも、できることはマスク・手洗い・ソーシャルディスタンスしかない、残念だけど。

 2学期の始業式は9月1日と思い込んでいたが、8月26日の朝、我が家の前の通学路を小学生達が一列で、マスクをして黙々と歩いて行く。最近は始業式の日に給食もあり授業もしっかりあるとのこと。いま、子ども達への感染が広がっているらしいが、冬休みまで休むことなく元気に通学してほしいと願っている。