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「ファクト」と「エビデンス」による決断を

渡邊隆之

 5月10日、多くの自治体で一斉に新型コロナワクチン接種の予約が始まった。同日のニュースでは電話回線の制限で予約できない、ネット予約の仕方がわからない、役所の窓口に多くの高齢者が書類を持ちこむ等各地の混乱ぶりが伝えられていた。また、5月17日には東京と大阪で自衛隊大規模接種センター予約も始まった。ここでは、架空番号や対象年齢以外の予約もできる等の不具合も見つかった。

 筆者も父親のために地元の市の接種会場での予約をしたが、接種券とともに郵送された案内文書のQRコードの読み取りをしても予約サイトが現れず、自力でサイトを探すという事態になった。予約開始から40分の遅れで予約できたものの、接種時期は当初予定より2週間程後になった。接種可能な空き時刻がみるみるうちに埋まり、見えないハイエナに面しているようで少し恐怖を感じた。

 企業で事務方やプログラマーを経験した筆者としては、今回の現場対応従事者のご苦労は非常によくわかる。接種予約案内については、予約サイトの管理は厚生労働省、案内文書の発送は各自治体が行うのであり、短期間でスムーズなネット予約を行うための擦り合わせもできなかったのではと推察する一方で、自衛隊大規模接種センターの予約システムについては、短期間でよくあそこまで仕上げたなという感想である。

 コンピュータープログラムはいわゆる正常ルートのみなら短い行数で終わる。エラールートの処理は想定すればいくらでも出てくるので、開発規模の大きいプログラムになるのである。年齢チェック処理の不備は残念であったが、架空番号でも登録されてしまうという指摘は、今回の開発期間の短さを考慮すれば最初の段階では許容範囲内ではないかと感じていた。可及的速やかに予約システムを構築し、本人確認は会場での対応でも可能だからである。ただ、不正または二重予約に伴うワクチン廃棄等の弊害を回避するためには、予約開始前に政府から国民へ誤入力のないように十分な周知を施すべきであったと感ずる。

 新しいことを始める場合、なにかと不具合が生じるのは常である。その都度、関係者の声に耳を傾けPDCAサイクルを回してよりよいものに改善できればよい。今回の大規模接種センター予約システムでの不具合の指摘につき、安倍晋三氏は「妨害愉快犯」として朝日・毎日を名指ししたが、筆者としては「ファクト」と「エビデンス」を基にした建設的な議論を望みたい。私たち国民にモヤモヤ感が抜けず、日々苦境に喘いでいるのは「ファクト」と「エビデンス」が尊重されず、十分な説明や補償もなく、営業の自由や生存権等が過度に脅かされているからである。

 五輪延期決定から1年、ワクチン獲得の遅れや入国者への検疫・待機制限での躓きはあったが、不備な点は今からでも改善して、早期に社会インフラの復旧に努めるよう政府や各自治体にはお願いしたい。その際、ワクチン接種による集団免疫獲得は重要だが、現場対応従事者には過度の負荷がかからぬよう配慮していただきたい。

 併せて、大村智博士が発見した「イベルメクチン」の治験・投与やそれに伴う法整備等にも是非資源を割いていただきたい。インドでのコロナ治療で投与に踏み切ったところ感染者数・死亡者数が激減しているし、ワクチン入手が困難なアフリカでも実績があるからである。イベルメクチンは経口薬なので注射の打ち手確保の問題も解決するし、自宅療養者にとってもメリットがある。重篤な副作用もないという。WHOはその効果に懐疑的であるが、「ファクト」と「エビデンス」に基づく情報を基に考えていきたいところである。