月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

ちぐはぐな話

音無祐作

混乱 1

 2007年以前のETC車載器の一部が2022年11月から使えなくなるそうです。14年以上前のモデルとはいえ、ETC車載器なんて日頃から買い替える動機も少ないと思われるので、しっかりと周知徹底をしないとトラブルを招きそうな気がします。

 私は、そもそもETC車載器は全車に配布すべきだったと考えています。もちろん相当な予算が必要ですし、対象の把握や配布時期・配布される機種に関する不公平感の解消など、課題は山積みだったとは思いますが、新車及び中古車販売の際や車検時に装着することを徹底していれば、ほとんどの使用中車両に3年程度で取り付けが完了できたのではないでしょうか。

 結果として、十分な普及までに十年以上を要し、未だにETCと「一般」の料金所を併設せざるを得ない状況を3年程度で解決できていたとしたら、その間の経済効果は、車載器の無料配布予算を上回っていたのではないでしょうか。懸念は、料金所廃止による雇用への影響ですが、ETCの取り付けや管理、あるいは道路関連の他のサービスの拡充なりで、解消できるでしょう。

 なんといっても料金所併設のためにかつてと同じだけの面積を使い、3列で走ってきた車列を横いっぱいに広げてもう一度3列に萎ませることにより、料金所手前ではなく、料金所の向こう側に渋滞ができている状況に遭遇するたびに、なんとちぐはぐな施策だろうと感じています。

ちぐはぐによる混乱 2

 話は代わって、新型コロナウイルス蔓延防止の切り札とされるワクチン接種ですが、こちらもあれこれ、ちぐはぐな対応が見受けられます。

 当初、集団接種の事しか頭になかった私は、わが老親に届いた予約資料を見ながらネット予約をしようとしましたが、本人に希望の会場と日程を決めてもらおうにも選択肢がありすぎて、どうしたら良いか困惑するばかりです。どうせ、かかりつけの病院に行く以外に決まった予定はないのだろうと半ば強引に、徒歩で一番近い会場の、通院以外の曜日を私が選択し決定しましたが、選択肢を多く差し出されると年配者に限らず困惑するでしょう。

 それから数日後、東京や大阪では国が手配する集団接種が受けられるだとか、かかりつけの病院・医院でも受けられるだとか複数の選択肢があるということを知り、さらにそれらの手段ごとに管理するネットワークが繋がっていないため、重複予約してもシステム上把握できないと聞き、そのちぐはぐさに驚きました。そもそも予約のための書類も、細かい文字で注意事項も多く、容易に理解できるものではないでしょう。

 新潟県の上越市などは、あらかじめ自治体で会場と日時を指定して各人に郵送し、都合の悪い方のみ変更を申し出るシステムにしたそうです。強引だという反発もあるかもしれませんが、他の地域での混乱するニュースを目にするにつけ、はるかに効率的ではないかと感心しました。

 そもそも、本当に感染拡大を早期に抑制したいのであれば、医療従事者への接種をもっと早くに済ませた後に、他のエッセンシャルワーカーや活動の活発な現役世代から、ワクチンを開始すべきででしょう。結果的に高齢者への感染も抑制できたことでしょう。情けは人の為ならず、ワクチンは当人のためならず、といったところでしょうか。

 河野行革担当大臣殿、はやる気持ちはわかりますが、物事を順調に進めるには十分な段取りもまた大切です。自治体まかせにするばかりでなく、官僚や学者、そして民間機関などの優秀な頭脳集団を活用しもっと効率の良いワクチン接種を始めるための、事前の作戦は十分だったのでしょうか?