月刊ライフビジョン | 社労士の目から

コロナ下の組合活動 by Web

石山浩一

 新型コロナウイルス(コロナ)によって在宅勤務が奨励されている。感染拡大防止のためには3密を避け、不要不急な外出を控えるように政府が呼び掛けている。在宅勤務は応急的な対応と思われたが、ワークライフバランス効果なども指摘され長期化も予想される。

“悲喜こもごもの在宅勤務”

 週1日程度でスタートした在宅勤務だったが、逆に週1日の出勤日でも業務上問題がない部署もあるようだ。さらにすべての出勤日を在宅勤務に拡大している会社や部署があると報じられている。当初は不可能ではと思われた長期間の在宅勤務だが、比較的スムーズに実施されているようである。一方で、そうした状況下における都会での1DKや2DKのマンションから勤務するサラリーマン家庭では、仕事等のスペースの奪い合いという新たな問題があるようだ。

 「食卓で パパ・ママ仕事 ボク学習」

 「出勤と パパは隣の 部屋に行き」

 「パパ会議 息を潜めて 終わり待つ」

 それでも昼になれば揃っての昼食である。昼の休憩時間に3・4人分の食事を作るのは大変である。共働きの場合では料理経験のない男性はお手上げとなる。

 「パパ当番、今日も焼きそば ボクあきた」

 「店屋モノ パパの当番 うれしいな」

 夕方には定時で仕事が終わるのが普通である。仕事が終わればたまには赤ちょうちんで一杯となるが、悲しいかな在宅勤務ではそれができない。奥さんがお酒を用意してくれれば少しは気が紛れるが、おかわりの回数に気を遣う。カウンターの女性なら「オーイ酒」と大声で頼むことができるが、家庭では小さな声で「もう一本」といって、自分で腰をあげることになる。

 「オーイ酒 心で叫び 燗付ける」

 「銚子手に 妻の目避けて 台所」

“Web上での組合活動”

 会社組織は議題に対して意見を求めることはあるが、上位下達で物事が進められる。従って、Web会議でも障害はそれほど考えられない。一方、労働組合は議論の後に採決で物事を進めるのが一般的である。Web会議での採決に関しては特別な規定を設ける必要があり、単純に採用することは難しいようである。なかでも最大の課題はスト権に関する投票である。

 労働組合法ではスト権の投票に関しては、「組合員または直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を得なければならない」となっている。賃上げ交渉がスタートする時季となっている。賃上げ交渉に先立ってスト権投票を行い、交渉をバックアップする労働組合もあると思われる。

 在宅勤務時のスト権投票は、趣旨説明をWeb等で行う。そして投票できる期間を長くして在宅勤務者の出勤日に投票することが考えられるが、検討を要する課題である。

 労働組合の役員の選出についても、労働組合法は組合員の直接無記名投票によるものと規定している。そのほか単組独自に規約で組合員の直接投票による改正内容等を規定していることも考えられる。

 スト権投票や役員の選出等、在宅勤務が常態化するようであればその扱いについても検討する必要があるだろうが、単なる杞憂であってほしい。


石山浩一
特定社会保険労務士。ライフビジョン学会代表。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。   http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/