月刊ライフビジョン | 社労士の目から

コロナと飲酒の新習慣

石山浩一

 猛暑日が続いているが9月になれば心地よい風と共に、名月が輝く季節が訪れる。新型コロナの収束気配はまだだが、1日もはやくコロナが収束し、以前の生活に戻りたいものである。

“酒は静かにひとり飲むべし”

 これまでだったら久しぶりに尋ねた先で、チョット一杯と誘うことができた。しかし今は誘うことを躊躇する。飲み屋でコロナに感染したら、その相手の家族に恨まれてしまう。ましてやその家族に高齢者がいたら取り返しのつかないことになる可能性もある。そう考えると安易に誘うことができない。会議は形式であり酒は会話の潤滑油、本音は会議後の飲み会で聞くものだと教わって、まじめに実行していたように思う。こうした自腹の飲み会は「接待」とは呼ばないはずである。

 新宿で「夜の町の接待」がコロナのクラスタ―と報じられ、小池知事が自粛を呼びかけていた。接待に無縁な者としては銀座が本場と思っていたが、新宿が接待の温床であることを初めて知った。接待とは会社が必要な情報等を得るために行うものであり、そのため費用は会社から接待費として支給される。その接待を若者が新宿のホストクラブに行ってコロナに感染しているというのだが、それは私的な飲み会ではないかと疑問に感じている。

 仮に業務上の接待でコロナに感染すれば労災が適用される。労働基準法でのいわゆる職業病リストとして大臣告示の定めに適用した場合である。医療従事者や介護関係、スーパーのレジ係等は業務のため人と接することが避けられず、こうした職業と同様の扱いとなっている。気の合った友達と飲みに行ってコロナに感染しても労災にはならないが、接待なら労災と認定される可能性があるということである。

 猛威を振るっているコロナが私たちに教えているのは、非日常から日常の生活に戻れということである。接待で飲む酒は非日常であり、日常の酒はひとり静かに飲むものなのである。

“オンライン飲み会と授業”

 酒は悲しみを和らげ、怒りを鎮め、哀愁をやさしく包み、喜びを倍加させてくれる。コロナ騒動が起こった2月以来、酒に関しては「日常飲み」の日々が半年以上続いている。これはどう考えても自分には、非日常である。やはり酒は、気の置けない人と語り合って飲んでこそなのである。オンライン飲み会ならコロナの心配はないという。声はかけられたが未経験なのでその効用は不明である。娘に言わせると、オンライン飲み会なら海外駐在で滅多に会うことのない同級生と一緒になるので、非常に盛り上がるという。確かに感染の心配はないが、そんなに盛り上がるものだろうか。試してみたい気持ちもないではない。

 筆者が受けているZoomのオンライン授業では、画面に映っている教授が誰を見ているのか分からない、教室の雰囲気を感じることができない、それがために質問がしにくいことがある。教授が授業を和ませようと冗談を言っても、受講生たちの音声がオフになっているため笑い声が聞こえない。寂しく思う。通学の必要がなく何処にいても授業が受けられることから、オンライン授業を歓迎するような声も聞かれる。しかしテレワークやオンライン飲み会にも通じるが、顔を合わせての情報交換や飲み会であるからこそ、身につく社会勉強もあるというものだろう。


石山浩一
特定社会保険労務士。ライフビジョン学会代表。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。   http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/