月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

使わなければ錆びるもの

音無祐作

 ニューヨーク在住のマイケル・マカティアさん。NHK・BS放送でのニュース番組に週に1回登場するのですが、とても流暢な日本語に驚かされます。時事ネタを絡ませたダジャレをふんだんに織り交ぜながら、ニューヨーカーの最近の風潮などを日本人のそれと比較しながら面白おかしく、かつ怪しい関西風イントネーションで伝える姿は感動モノです。

 いくら京都生まれとはいえ中学から大学卒業までをアメリカで過ごし、再来日後も、ニューヨークに渡って8年は経っているというのに、日本の知識もセンスも全く衰えていない。最近の日本事情にまで詳しいことに、日本語しかわからない私は驚くばかりです。

 海外赴任から帰った方に聞いた話では、普段使っていないと語学はすぐに忘れてしまうと聞きました。忘れないために映画を外国語で視聴したり、本や新聞を読んだりと、努力が必要だと伺ったことがあります。

 とかく知識は使っていないと錆びてしまうものです。せっかく仕事のために取得した資格や技能も日常的に活用していないと、いざというときに思い出せないという経験は少なくありません。

 同様に、日々の暮らしに必要な知識はたくさんあります。食事のマナーや食べ合わせ、食材の旬や相場、ごみの分別方法、さらに最近では日々進化する電気製品の使い方から、ネット用語やマナーまで、新たに覚えなくてはならない知識が次々と現れてきます。

 中でも現代社会を生き残る上で非常に優先順位の高い、にもかかわらずめったに学習の機会のない知識のひとつに交通ルールがあります。なにせ本格的に学んだのは運転免許を取るときくらい。免許の更新時や小学校の交通教室などでもちょっとした講習などはありますが、形だけといっていいくらいのレベルです。

 それでもまだ、運転免許を取得したことがある人ならば、ひととおりの教育を受けたことはあるはずですが、子どもたちや免許を取得したことの無い大人にとっては、日ごろ目にする道路標識も何のことやら。私も運転など生涯してこなかった母を助手席にのせて道案内をしてもらうと、通行禁止のところへ入って行けだの、右折禁止の交差点を曲がれだの、困惑することしきりです。

 今後はオリンピックで新種目となるスケートボードやBMXを、路上で遊ぶ子供も増えることでしょう。交通ルールや自動車の危険性を知っておかないと、悲惨な事故が増えそうで心配です。

 教育が必要なのは、子どもばかりではありません。近所の通学路では、自転車に子供を乗せたまま、赤信号を平気で渡っていく保護者を見かけます。子は親の背中を見て育つもの、大人がソレで子どもに気をつけろと言っても、説得力がありません。

 今後はオリンピックで新種目となるスケートボードやBMXを、路上で遊ぶ子供も増えることでしょう。交通ルールや自動車の危険性を知っておかないと、悲惨な事故が増えそうで心配です。受験科目やプログラミングも大切かも知れませんが、交通ルールを始めとする、生きていくため、死なないための知識の習得やメンテナンスの機会を確保することは、必須科目と言えるでしょう。