月刊ライフビジョン | off Duty

とにかく第一号にはならぬよう・・・

曽野緋暮子

 緊急事態宣言を受けてのStayHome対策として、地元の図書館がネットと電話での予約に限り本の貸し出しをすることになった。「予約本の準備ができました。」とメールや電話で連絡が来ると図書館に行き、受付でビニールシート越しに本を受け取る。図書カードはトレイ上で受け渡しする。もちろん、マスク姿で消毒液完備。会話は最小限。緊急事態宣言解除後6月15日からは館内での閲覧もO.Kになったが、受付での対応は「緊急事態」のまま維持されている。

 3月、コロナ禍で話題に上がった「ペスト」を読んでみようと書店に行ったが、在庫なし。書店ネットでの取り寄せ購入も面倒なので、試しに図書館のネットで検索すると貸し出し可となっていた。昭和の本ってこんなに字が小さかったんだとの感慨に浸りながら、貸出期間を延長しながら読んだ。次に「復活の日」を再読しようと図書館ネット検索。これもすんなり借りることができた。新入社員の頃読んだはずだがすっかり忘れていて、初めて読んだような感じだった。確か映画も見たはずだが、草刈正雄が出ていたような?ぐらいしか記憶にない。それにしても小松左京は存在感のある作家だったと、今を予言したような内容に改めて感心した。

 読みたい本が書店になかったことから始まった図書館の利用だが、ここにきて読書熱が再燃した。新聞の広告欄で面白そうな本を見つけると図書館サイトで検索し、申し込む。新刊は26人待ち、15人待ちなんてこともある。ひとり2週間として1年待ち位になる計算だ。以前だったら待つのが嫌ですぐに書店に走るところだが、多分繰り返し読むこともないだろうし、「断捨離」中の身としては蔵書は増やさないと決めている。我が家から図書館まで約2キロ。歩くのにちょうど良い距離だ。本をまとめて借用する人が多いようだが、私は読書&健康維持で1回に1冊ずつ借用している。まあ、定年後の閑人だからできることなのだが…。

 こういう長閑な日常の中、田舎ならではの衝撃的なできごとがあった。

 3月、娘の他県進学に伴う引っ越し手伝いに行った父親ともう一人の娘に帰宅後、コロナ陽性反応。公共交通機関での感染が疑われた。別件、同じく3月に海外旅行に行った女性が帰国後、陽性反応。どちらも周りに広がることもなく、早い回復だった。しかし回復後、今までの家に住みずらくなって転居したと言う。田舎では感染者が少ないし、検査に行く病院も限られているのですぐに、感染者が特定されてしまう。「本当に田舎アルアルだね~。引っ越しできれば良いけれど金銭的なこともあるから引っ越しできなかったらどうしようね~。」と友人と話した。都会ではそこまでのことはないだろう。

 5月25日の緊急事態宣言解除に続き6月19日、県境をまたいでの往来がO.Kになった。テレビニュースでは早速、観光地やデパート、商店に出かけた楽しそうな姿が映し出されている。今年初めまではニュースになるようなことではない日常が、明るいニュースとして取り上げられている。大阪の友人からも梅田で友人とランチとの楽し気なLINEが届いた。高速道路のETC土日祝日割引も復活したので、県外ナンバー車も多くなった。

 行きたい!羨ましい! でも田舎の民度というか住民性と言うか、気持ちは満々だが行動するまでには至らない。「とにかく第一号にはならぬよう…」が目下の私達の合言葉なのだ。