月刊ライフビジョン | off Duty

マスク捕物帳

曽野緋暮子

 1月30日、神戸で一人暮らしをしている叔母に様子伺いのLINEをした。返信の中に、出張で帰って来た息子が、中国の駐在員に送るためのマスクを買い集めているとあった。2日ほど前にドラッグストアで山積みのマスクを見ていたので軽い気持ちで「要るなら送ります」と返信した。翌日ドラッグストアに行くと子供用とSサイズが少々残っていただけ。驚いてドラッグストアを次々と回るもマスクはない、普段行かない薬局にもない。店員さんに聞くと「東京や京阪神の知り合いに送るとかで皆さん、大量にマスクを買われて。次に入荷するかどうかもわからない」とのこと。急いで叔母に「マスク品切れ」のLINEを送った。

 数年前のSARSを思い出した。あの時もマスクが店頭から消えた。会社関係の人にマスクを送らなきゃと探した。当時はガテン系のコーナーにちょっと頑丈なマスクが残っていたので、ぞれで対応した。今回はそちらもきれいに完売だった。

 運よく(?)昨年末、家族でインフルエンザに罹患した我が家には箱買いマスクのストックが1箱、除菌用スプレー、除菌シート等も残っていた。当時はそれで何とか凌げると、今考えれば安易な気持ちだった。SARSのようにそのうち治まると思っていた。しかし、いつ行ってもドラッグストアのマスク&除菌コーナー棚は空っぽ。1月初めの棚に積まれたマスク、アルコール除菌スプレーが嘘のようだ。

 先日遂に、箱買いのマスクが底をつきそうになったので朝8時前にドラッグストアに行った。9時開店なので8時半ごろには30人位の列になった。後ろに並んでいる人が「昨日は入荷がなかったんですよ。」と言われた。そういうこともあるんだ~。8時50分頃店のシャッターが開き、店員さんが「今日は子供用マスクが少しとアルコール消毒液が少しだけ入っています。大人用マスクの入荷はありません。」と、ここで列から約半数が離脱。私は更に10分待ってアルコール消毒液を購入した。200m1980円、めちゃ高い! 翌日も並んだが、全く入荷なし。すぐに10時開店の別の店に直行、運よく7枚入りの大人用マスクが購入できた。1枚約100円。今の相場では安いのかな。

 その後は手持ちのマスクを大切に使うことにした。今までは外出で着用したマスクは帰宅する度に捨てていたが、2日間位は使うことにした。また、ハンカチマスクの作り方を教わったのでそちらを多用することにした。

 自己防衛はするにせよ、社会的に不安が高まっているようだ。後輩から会社の出張がめちゃくちゃ制限されています。懇親会等の宴会を自粛するように言われました。3月の異動時期だが歓送迎会なし、定年退職者の送別会も少人数で…、等々の情報が入る。自宅に配達してくれる地元の醤油屋さん、「今はまだ良いんですが、飲食店に醤油や酢を納めているんで段々響いてくるのかなあ?」飲食店分の消えた消費をカバーするほど醤油を買うわけにもいかないので、返す言葉がない。友人のホテルマンも謝恩会キャンセル、国内外の旅行者のキャンセルが相次ぎパニックですと。支援したくってもできないことが次々起きている。

 私自身はもう一つ困ったことが。1月に証券関連を整理しようと思っていたが、タイミングを外してしまい、先の見えない株価の下落で老後のための資金が危うくなった。「こんなに下がったら買い時です。」なんて言う金持ちの話はさておき、売るに売れない10年物の塩漬け株、債券を抱え込んでしまった。「老後資金は投資で」などと調子に乗って踊らされていた自分に超自己嫌悪!!!この資金はなかったことにして生活設計を立て直さなくては!

 これからゆっくり老後を楽しもうと思っていた矢先に、先の見えないトンネルに迷い込んでしまった。朝の来ない夜は、本当にないのか!!!