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脱ギャンブルのIR構想を

音無祐作

 アメリカで2月第1週の日曜日といえば、アメリカンフットボールのナンバー1を決定するスーパーボウルの日です。先日、今シーズンの開催地であるフロリダ州マイアミガーデンズにあるハードロックスタジアムの駐車場を見て(注・行ったわけではありません)、そのあまりの広さに驚きました。いったい何台置けるのか、見当もつかないスケールです。

 アメフトファンにとってスタジアムの駐車場は、格別な意味を持ちます。観戦チケットが手に入らなくても、駐車場で仲間と「テールゲートパーティー」をしながら、ネットなどで試合を楽しむのです。駐車した車の後部荷室扉(Tail Gate)の前に机や椅子を出して、飲食を楽しむのですが、アルコールも入るため当然、試合当日の日帰りではなく前後多泊するファンもいることでしょう。日本でも地域によってはサッカースタジアムなどに広い駐車場がありますが、車中泊やパーティーまでするような猛者はまだ、多いようには思えません。

 日本でも、地方空港や主要駅にリーズナブルな駐車場が整備されていることに感心したことがあります。その一方で都市部では、駅などの駐車場はあっても料金が高く、とても利用しやすいとは言えません。東京への一極集中が進み、最近では中古の集合住宅取引では、「駅から徒歩5分以内でなければ、価値はない」とまで言われるほど、鉄道の利便性だけが重要視されています。環境問題を考えれば理想的だと思いますが、都市の駅周辺に高層住宅が増え続ける一方で、地方の過疎化が進行していくのはいびつです。経済の中心地に住居が増えていくのは、その国の経済の地盤沈下の証左だという説も聞いたことがあります。

 例えば、都市から郊外駅までの鉄道利便性を向上し、そこに利用しやすい駐車場を十分整備するなど、通勤や遠距離のレジャーにも利用しやすい環境を整えてみてはどうでしょう。長距離ドライブを考えない、最寄り駅やスーパーまでの短距離の移動体ということになれば、電気自動車などの普及にも拍車がかかることでしょう。郊外であれば、歩車分離の道路環境を整えて、将来の無人自動運転車への対応もしやすそうです。

 今、日本のリゾートは外国からの観光客頼みで、国内の需要は低下しているとも聞きます。反面、移動しやすい環境を作ることのより、国内のリゾート需要も喚起できればおのずと、海外観光客からも喜ばれる施設が増えていくような気がします。

 モータリゼーションの発展と環境配慮のまちづくりが、そしてなにより、ギャンブル収入に頼らず国全体で統合的(Integrated)にリゾート(resort)を考えていくうえでも、鉄道へのアクセス利便性(relation)を考えた駐車場の充実は、一役買うのではないでしょうか。