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ねずみ年に想うこと

渡邊隆之

 年が明けた。年末には年賀状用にねずみのイラストを探していたが、筆者とねずみには少し屈折する接点がある。

 数年前の話である。近所にテレビでも取り上げられる有名な激安スーパーがあった。あまりの混雑で駐車場が確保できなくなったらしく、別の場所に移転していった。以来ねずみ君との遭遇機会が多くなった。久しぶりに物置を開けると、古びた長靴の中から「はい! ひょっこりはん」だったり。その長靴は速攻で捨てたが、まだまだいろんなところに潜んでいそうである。

 筆者が子どもの頃には、家の周囲は田んぼやねぎ畑、野原もいっぱいあった。あれからウン十年、周囲は住宅がびっしり。人口が増えれば一帯が温かくなるし食料も潤沢、ねずみ君たちには快適なことだろう。この冬、急に寒さが厳しくなった際、天井裏でゴトッと大きな物音がした。この寒さゆえ同情の念も湧くが、インターホンの配線を食いちぎられたとなると流石に、なにかの手を打たなければならないだろう。以前、ねずみ君の駆除と侵入経路を塞ぐ工事をお願いした業者に電話をすると、今シーズンは秋の台風以来注文が多くてすぐに行けないとのこと。駆除・防除については現在も業者待ちの状態である。

 次善策として粘着シートを購入して天井裏や出没しそうなところに仕掛けると、大体、最初にかかるのはわが父である。「よく見えないところに置いておくのが悪い」とお叱りを受けるが、よく見えたのでは端から掛かるわけがない。図体の大きい人間はなんと愚かなのだろう。彼らは小さいがとても賢いのだ。天井裏の物音を気にしつつも、「大地震の前には真っ先にねずみがいなくなる」という話を思い出して少し安堵したりもする。

 その一方で干支がねずみの姉は最近ご無沙汰である。老いた父親が同じことを何度も繰り返し問うので、姉ねずみは我が家に居着かないのか。そういえば筆者がお見合いで袖にされたお相手の干支も確かねずみであった。干支のねずみと縁があるのかないのか、よくわからない。

 ところで経済アナリストは、今の日本は景気が良いという。しかし、働く独楽鼠には実感がない。安倍政権は長期にわたるが、「景気が良い」ならなぜ財政出動が多額なのか、モリ・カケ・スパときて桜に至るまで、首相や与党に都合の悪いことは情報公開請求をしてもノリ弁回答である。疑惑の人物は国会招致もされないし、首相夫妻を守るべく、閣議決定も国政の体を成さず。「反社会的勢力について定義ができない」など、これまたねずみ年の官房長官の苦しい答弁が続くが、言動の綻びは大きくなってきている。国民の気持ちを軽んじる政財官の方々には次の言葉を贈りたい。

 われら独楽鼠、小動物と言えどもチュウ意を怠ることなかれ。