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野党は政権打倒に木っ端役人と共闘せよ

司 高志

 全く、偉い人たちはやり放題だ。前東京都知事のセコい公私混同もひどかったが、千葉県知事の公私混同もひどい。台風の最中に私邸に行ったりラジオの放送に出演しようとしただけではなく、自らの所属事務所への優遇疑惑など、やりたい放題の感がある。

 そんな中、日本郵政の副社長に総務省の内部情報が漏洩していたニュースがあった。世間では情報漏洩がけしからんという方向で進みそうだが、実は日本郵政の副社長は元総務省の天下りであり、後輩で現役の事務次官から情報を得ていた。

 ところで筆者の興味は、なぜ天下りが起こるのかにある。そもそも公務員は大っぴらに天下り出来なくなっているはずだが、天下りを規制している法令と実情に乖離があるのではないか、もしくは合法的な抜け道があるのではないか。

 天下りの規制は木っ端役人が正面切って転職や再就職するのを妨げるのには役に立つが、そもそも受け入れ組織にメリットがなければ、天下りできない。規制を全く受けずうまいことをやるのは偉い人たちだが、この人たちに対してはザル法である。結局取り締まられるのは、天下りできない木っ端役人で、偉い人はスイスイ脱出可能なのだ。

 「桜を見る会」の文書管理も構造的には似たようなものだ。木っ端役人が自らに都合の悪い文書をガンガン捨てるという事態は起こりにくい。現場ではあれこれ悩みながら、法令を遵守しようと日夜格闘しているのが現状だろう。法令の要求事項がどんどん厳しくなり、しわ寄せされるのはいつも現場である。

 結局のところ、木っ端役人が自ら進んで、すでに作られて存在している文書を廃棄したり、情報公開の請求があった瞬間に文書を蒸発させることは、起こしづらい。文書管理の担当者には何のメリットもないからだ。たいがいは天の声により、木っ端役人が下手人とされることになる。森友案件では自殺者まで出したのに改善されていない。

 野党による森友学園の直接追求は失敗したようだが、今後の文書管理手法について与党と戦うという手があったのに、木っ端役人を呼び出して痛めつけることのみに終始した。

 桜を見る会についても同様、野党がいくら攻めても木っ端役人が自ら、法令違反と明確にとれる行為をするはずがない。それよりも今後の文書管理の運用上のルールを与党にのませることで、それらが小さな改善につながる。野党の一致点は「現政権打倒」にしかなく、これからどうするという点ではバラバラなので、文書管理の改善に及ばない。

 こういうことが続いているので、政権の支持率を下げることはできても自らの支持率向上につながらず、慢性的な低支持率である。日本郵政の問題について今後、野党が木っ端役人を呼び出して責めるばかりでは、どうにもならないことは明白である。

 それよりも天下り防止策を考えて運用を与党にのませるという方が、今後に対する有効性が大きい。野党は国民の声を形にできる権限が与えられているのに、有効に生かし切れていない。国民に認められる地道な活動を行わなければ、いつまでたっても低支持率のままだ。一番楽に票が取れそうな木っ端役人への罵倒だけではどうにもならない。猛省を望む。