論 考

戦略的投票をする有権者たるべし

 デモクラシーにおいては、選挙で議員を選ぶから、議員諸君が好き放題しないで民意をつねに尊重して活動する――というのは前提である。

 現実にわれわれが目にするのは、民意たる1票の行使の後は、政治に民意が届かない。

 選挙で議員を選んでいるのは事実であるが、その後の議員に民意を反映させるためには、なにか別途の方法が必要になる。その1つとしてマスコミによる監視機能に期待がかかるが、どうもそれだけに依存するのでは間に合わない。マスコミが各自に民意に依拠して立つ保証がない。

 では、けしからんことが発生した場合、次の選挙で、当該議員が確実に落選するという常識が成立すればいいのだが、それもまたない。

 むしろけしからんことをやって一時世論の総スカンを食らっているように見えた議員が、選挙で再び当選して、以前の所業が水に流されたかのような態度をとる。

 概して選挙以外には直接政治に関わらないのが世間の気風であるが、せめて、マスコミで議員活動にふさわしくない行動があった場合に、目に見える批判が出るように、有権者が投票行動を起こす程度の政治意識を涵養したい。それが可能になれば、だいぶデモクラシー政治らしくなる。

 なにしろ、恰好つけているけれども、政治家諸君が選挙自体に極めて神経を使っていることは事実なのだから。

 決して選挙行動が無駄にならないためには、各人が「戦略的投票」の技術を磨かねばならない。それが前進すれば、もう少し日本的デモクラシーの進歩が見られるであろう。