論 考

危ない世界、ふらつく日本

 米軍特殊部隊がシリア北西部イドリブ県で、2500万ドルの「お尋ね者」のIS・バグダディを追い詰めて自爆させた。潜伏5年間であった。

 トランプ氏の派手な発表は異様である。米兵のシリア撤退が悪評なので、それを意識して人気回復へつなごうという狙いだが、下品かつ下劣だ。

 プーチン氏は12年ぶりにサウジを訪問、企業トップを大挙引き連れて大型商談成立を狙っている。トランプ氏の派手な発表には、商売人の感で、アメリカの隙にロシアが中東へ進出することが、自分の評価のマイナスになるから、一時的に目くらまし作戦を取ったみたいである。

 本日の読売社説は、香港問題をめぐって、中国が米国企業に圧力をかけていることを露骨な脅かしだと批判した。それはその通りである。

 ただし、世界貿易を混乱させ、中東に新たな動きを招き、中国が強硬な態度をとる原因を作ったのはトランプ氏である。中国はやられっぱなしで低頭する流儀ではない。はじめに中国企業イジメをやったのはトランプ氏である。

 トランプ氏がアメリカ・ファーストをぶち上げて以来、世界は極めて不穏当になっている。いま、ただちにトランプ流を廃止したとしても、ここまで危なくなった世界の情勢を引き戻すのは容易ではない。

 日米安保体制は、お釈迦さんの手のひらでも、孫悟空の緊箍児でもない。自分の頭で考える、独立独歩の視界をもたなければ世界は見えない。いま、世界は極めて危険である。

 恰好だけの大国主義に幻惑されるのではなく、世界平和を本気で追求する小国主義の気概をこそ持ちたい。