論 考

人生に正解あり?

 朝日新聞の読書投稿欄に21歳大学生が、「人生における正解がほしい、誰かに教えてほしい」という主張があった。

 いままでは教科書などに正解が掲載されていたが、大学生になってみると世の中には正解らしきものがない、というため息(?)である。

 わたしも高校生活までは、それなりに試験で正解と思う回答を書いてきたが、教科書から人生における正解を手に入れようと考えたことはなかった。

 社会人としての徒弟時代、「(人生を)いかに生きるべきか」と正面切って自問自答した体験はなかったが、いつも、なんらかの選択をし、意思決定していた。日々のくり返しから、こんな生き方をしたいというものを形成してきた。

 たまたま一昨日は漱石さん(1867~1916)の『門』(1910)を再読した。人生に悩んで、主人公の宗助が禅寺へ行く。坊さんが「書物を読むのは極悪うございます。有体にいうと読書ほど修行の妨げになるものはない様です」と語る。

 ショーペンハウアー(1788~1860)は「本なんてものは他人の古着だ」として、「自分で考察してこそ洞察も知識も豊かになる」と記した。

 大学生が、人生に正解ありと考えているとは思えないし、ましてや誰かの古着(人生)をちょうだいと本気で言うはずもないから、この投稿は、世間の大人面して、バカばかりやっている連中に対する皮肉なんだろうかなあ。