論 考

やはりイギリス政治に学ぶべし

 人間は問題を先送りする傾向が強い。1つは、いい知恵が沸かないからであるが、その元々は本気で考えないからである。

 本気で考えるとは、解決しなければならない問題の故事来歴をたどって、問題の問題たる理由が何なのかについて整理しなければならない。

 イギリスのBrexit騒動をみていると、はじめに離脱すべきか否かの国民投票があったのだが、EUとは何か、なぜ離脱しなければならないかについての議論がなかった。保守党(当時キャメロン首相)が安定的議席を確保していくための1つの手段として! 国民投票を使ったのである。

 キャメロン首相の前のブラウン首相の時代までは、首相は解散権を行使できたが、2011年に議会任期固定法が成立した。これによって、下院の解散は、内閣不信任案成立か、下院議員の2/3の賛成がなければ解散できなくなった。

 イギリスでは1990年代から、解散権についての議論がおこなわれており、首相が恣意的に解散権を行使できないようにしたのである。任期5年の下院議員がじっくり議論をするためにという正論であって、これは、日本が学ばねばならない大事なポイントである。

 ところが、キャメロン首相は解散に代えて国民投票を使った。保守党の人気が低落していた原因がEUにあるのではない。そもそも、問題設定が間違っている。その結果が、2016年から3年目になっても、イギリス政治を混乱させ続けている。

 権力を支配する者が、党利党略や自己都合にのめり込めば、デモクラシーはいつでも破壊されるという、大きな教訓である。