週刊RO通信

全タイヨー労働組合、企業民主化を訴える

NO.1323

 鹿児島の全タイヨー労働組合(白石裕治委員長)が、企業の民主化闘争に取り組んでいる。8月末から9月3日にかけて、上部団体のUAゼンセン、連合鹿児島が支援し、「全タイヨー民主化行動」の街頭宣伝を展開した。

 組合の訴えは、――会社は、①労働基準法違反を止めよ、②労働条件の一方的引き下げに反対、③組合潰しを止めよ、④団体交渉に応じよ――の4点である。7月29日には、東京都労働委員会へ提訴した。

 株式会社タイヨーは、総合スーパーで、鹿児島・宮崎を舞台に営業している。創業は1960年、当初、酒・煙草・食料品などの販売から始めて地元密着スーパーとして成長した。地元での人気は上々であった。

 2代目社長に清川和彦氏が就任して間もなく、93年には資本金58.4億円に増資、翌年、大阪証券取引所第2部へ上場。97年には売上高1,000億円を達成、創業40年の2000年に売上高1,200億円を達成。ファミリー・フレンド企業として鹿児島労働局長賞も受賞した。

 98年には、鮮魚トレーニングスクールを開設した。鮮魚のベテランが後進を指導する。食品スーパーで鮮魚の処理は極め付き重要だ。当時を知る人は、いい商品を提供しようという意気込みが溢れていたと語る。

 流れが変わったのは2013年である。大阪証券取引所と東京証券取引所の市場統合に伴い、東京証券取引市場第2部上場としたが、直後にMBO実施を発表、次いで上場を廃止した。14年、資本金を1億円に減資した。

 MBOは経営者が株主から自社株式を譲り受ける。上場企業は機関投資家や株主に対するIR(投資家向け企業情報)のコストがかかる。敵対的買収の回避策として、上場廃止する過程で見られる方法である。

 タイヨーの場合も買収の話がちらほら聞こえていた。上場廃止すれば、買収リスクからは解放されるし、株価に一喜一憂する必要もなくなる。

 周辺事業を拡大、多角化した結果、資産が増加しても収益性が低下したなかで、経営の自由度を高める狙いもある。当時社長は、マスコミの取材に対して買収防衛策と、企業活性化策だと語った。

 この間、円滑だった労使関係にも見解の違いが目立つようになった。組合は、会社は社会的公器だと考える。買収防衛論についてわからなくはないが、むしろワンマン経営に傾斜することを心配する。

 18年に、和彦社長は会長に、長男の継一朗氏が30歳で社長に就任した。社長交代は27年ぶりである。継一朗氏は大学を出て12年入社、16年常務取締役を経て社長の座に就いた。個人経営商店の特徴である。

 いま、95店舗、従業員は約5,800人であるが、売上高は1,000億円を切っている。17年には売上高1,200億円超、従業員7,243人であった。企業経営活性化が最大の課題である。

 新社長は、30年で1兆円企業に、店舗は現在の10倍近い840店を目指すとして、経営を刷新するという触れ込みである。威勢はよろしいが現在の経営改善に効果的な手立てをなんら打ち出せていない。

 実際、職場は従業員が辞める。辞めても補充策が不出来だから、労働強化になり、その負担に耐えかねて辞めるという悪循環だ。組合が意見を述べると、社長は「足を引っ張るのか」という調子で、かみ合わない。

 超過労働時間で労働基準監督署の是正勧告が出されたが、会社はきちんと対応していない。非組合員の部長を降格して組合員資格にし「管理職組合」をつくって組合潰しをやっている。都労委提訴を理由に組合との話し合いに応じない。組合の街頭行動に対する市民の反応は好意的である。

 概して、オーナー企業では、社長の「わしの会社だ」「鉛筆1本までわしのものだ」「わしが会社だ」という古めかしい意識が強い。いまのタイヨー社長は頑迷固陋の見本である。若いだけではなく未熟過ぎる。

 社長は会社が公器だということがわかっていない。創業間もない時期ならいざ知らず、社長1人で会社を動かせるわけがない。会社が集めるのは人手ではない。経営は、人々の協力・協働を編み上げるのが鉄則である。

 全タイヨー労働組合の闘いは、いまだに色濃く残る封建的経営思想に対する全労働者の闘いを担っている。粘り強い闘いを期待する。