論 考

ふたりはひとりに勝る

 1928年1928年2月20日、男子普通選挙権が実現して最初の選挙であった。有権者が327万人から1240万人へ、一挙4倍近くに増えた。投票率は80.33%であり、盛り上がったことがわかる。

 与党の政友会は、官権を乱用、地方官を押さえ、警察を使い、利権を振り回して、買収の横行という下衆な盛り上がりでもあった。

 法定選挙費用は1.2万円に制限されていたが、資金をもつ政友会・民政党の候補者は7~8万円使ったらしい。1票が平均2円という勘定も残る。

 無産政党は、金はなし、組織化は未熟、選挙は不慣れであったが、演説一本で元気に闘った。

 当選したのは少なくて8人、前の選挙では30人当選していたのが、せっかく普選になったのに大幅に後退した。二大政党の政友会と民政党の猛烈な争いに飲み込まれてしまった。無産政党の得票は49万票で、組織労働者の67万人に及ばなかった。

 無産政党の敗退の主体的原因は、無産政党の分裂である。全122選挙区の61区に立候補したが、無産政党同士の選挙協定ができたのは25区、それも大方は有名無実で機能しなかった。

 ――ふたりはひとりに勝る――(伝道の書)という単純な言葉を確かに実践できるかどうか。今回の選挙、野党諸君には性根を据えて闘ってもらいたい。