論 考

新社会人に寄せる

 学生時代に、自分の将来進む道を発見し、しかも学校を卒業すると同時にその道へ進める人は極めて少ない。どこかへ入り込まなければならない――これが、大方の進路決定事情であろう。

 首尾よくどこかへ潜り込んだとしても、まず、そこの水が合うかどうか。これもまた非常に悩ましい。そこで——先人の言葉を贈ろう。

 「私は、私の生産活動において、私の個性とその独自性とを対象化し、したがって活動の間に、私自身の生命発現をたのしむとともに、対象物を観照することによって私自身の喜びを味わう」

 新天地で、直ちにこの通りになるならば天才的だ。しかし、事態がこの言葉を実践する方向にあるかどうかを、ときどき考えつつ、何が問題なのかを確認しつつ歩んでいけば、やがて自分が確信をもって進める道に到達できると、わたしは思う。