論 考

漂う日本丸

 政府を代表する首相によってなされる通常国会冒頭の施政方針演説は、国の在り方の現状を顧みて総括し、世界の状況を大きく分析し、ゆえに、今後はこのような針路を進もうではないかという、国民に対する意思表明である。

 政府の仕事は膨大である。関係省庁が提出する内容をまとめ上げるだけでも膨大になる。目立つ課題の目次をだけでも膨大だ。昨日の施政方針演説は、できるだけ政府が活動していることを並べたので、メリハリがない。

 世界の状況を概観すれば、いたるところで、衆愚政治を展開する政治家が目立っている。政治家の良識としては、そのような政治を克服して、デモクラシーの政治を推進したいと語るべきだが、そんなことが言えるわけがない。

 なんとなれば、わが首相を筆頭にして、まさに衆愚政治の潮流に掉さしているからである。

 元号が変われば人心一新する、というような能天気な期待をする有名ジャーナリストもいるが、わたしの感想は、シャンとした船頭のいない日本丸の姿が、それなりに見えた次第だ。

 ついでに加えるならば、長期政権で安部氏自身が意識せざるマンネリ感の霧のなかにいるようだ。それが、メリハリを欠いたもう一つの理由であろう。

 モリカケはじめ、さまざまの不祥事に対する批判が、ダメージとして効いている。